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ソフトバンクが放出「足のサイズ31…衝撃のロマン砲」に“ある予感”…日本ハムが欲しがった水谷瞬とは何者? 本人が明かす現役ドラフト「当日の電話」
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKotaro Tajiri
posted2023/12/10 06:00
ソフトバンクから日本ハムへの移籍が決まった現役ドラフト当日。球場を後にする水谷瞬
「日本人離れしたパワーがある、その体勢からあの飛距離を打つのか、と」
ただ、理由についてそのように話し始めると、会場中の空気が「ん??」と変わった。いや、スタントンはそもそもアメリカ人だから「日本人離れ」は違うんじゃない、と。
新入団発表の珍発言といえば、思い出すのは柳田悠岐だ。入団時に与えられた背番号44について印象を聞かれた時、ちょっとニヤリとしながら「獅子舞……ですか?」と答えて爆笑を呼んだのだった。
そんな共通点もあって水谷には大物感を漂わせるものがあった。そして性格もよく、明るいキャラ。先輩たちにもミドルネームの「ジェシー」と呼ばれて可愛がられた。特に1年目オフから自主トレに同行させてもらった松田宣浩には面倒を見てもらっていた。
“異例だった”自主トレ…ドミニカ共和国で実施
ただ、4年目の昨季までは“クビ”と背中合わせだったといっても大袈裟ではない。二軍でも目立った成績を残せず、特に昨季は故障もあってウエスタン・リーグは13試合しか出場できず、1本塁打のみと自慢の長打力も発揮できなかった。
背水の思いで今季5年目に臨んでいた。
何かを変えなきゃいけないと必死だったのだろう。1月の自主トレは松田のもとを“卒業”し、ドミニカ共和国で行う異例の取り組みをした。現地ではソフトバンクの通訳に力も借りながら、大物大リーガーで今春のWBCにも出場していたケテル・マルテ(ダイヤモンドバックス)と一緒に練習を行った。どん底だった昨季の経験から「180度何かを変えたい。メジャーリーガーはどんなことをやっているのか、彼らから僕はどう見えるのか。それを知りたかった」というのが狙いだった。
行ってみて、技術はもとより考え方を変えるきっかけを掴んだ。たとえば日本では不調になったら「数を打て」と指導されがちだが、マルテには「しっかり休憩をとってやり直せ」と言われたという。ミスを引きずらないという思考。今までは焦って失敗を繰り返す悪循環だった。そんな自分と決別しよう、その決心をしっかり固めることが出来た。