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“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
「足裏がゴツい、指が長い」“下駄”で走り回っていた佐野海舟(22歳)ビックリ幼少時代…森保ジャパン新戦力“驚異的な回収力”のナゾ
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byKiichi Matsumoto
posted2023/11/24 11:03
下駄を履いて田んぼで走り回る幼少期を過ごした佐野海舟(22歳)。驚異的なフットワークの秘密に迫った(小学生時代の写真は父・龍一さん提供)
かくして、下駄を履いて走り回っていた海舟少年は、プロサッカー選手となり、ついに日本代表のユニフォームに袖を通すまでになった。
代表デビュー戦となったW杯アジア2次予選のミャンマー戦が行われた吹田スタジアムのスタンドには、龍一さんの姿があった。試合後、宿泊先のホテルに戻ると、海舟から電話がかかってきた。
「これまで試合後にこっちから連絡することはあっても、向こうから連絡してくれることはなかった。初めてのことだったので驚いた」
電話の先には饒舌な海舟がいた。「ものすごく楽しかった」と話す声は弾んでいて、会話は40分ほど続いた。
そこで父はこう伝えた。
「海舟、これがすべてじゃないぞ。ここがゴールじゃない。まだ22歳。これからもっと辛いことがあるし、しんどいことがある。大なり小なり生きていることはそういうことだ。常に自分にベクトルを向けてやってほしい」
海舟も「俺のゴールはここじゃないから大丈夫だよ。ありがとうな」と答えて電話を切った。
息子の“充実した声”に感激、興奮
「今までサッカーの話をした中で一番充実した声でした。相手がどうこうではなく、あのメンバーの中でサッカーが出来たことが嬉しかったんだなと伝わってきました。僕自身もめちゃくちゃ嬉しくて、その日は興奮しすぎて眠れず、ずっと海舟のプレー集を動画で見ていました(笑)」
決してサッカー選手にさせようとして下駄を履かせたわけではない。健やかな成長を願ってやったことが、結果としてサッカー選手としての大輪の花を咲かせる原点になった。
寡黙な職人気質のボランチは、これからも分厚い足の裏でピッチを踏み締めて、日本のためにボールを回収し続ける。
(全2回・完)