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「妊娠して仕事に影響が出ては…」“在ブラジル日本人柔道コーチ”母と長男・長女の成長日記「習い事も遊びの延長のようなものです」
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byHiroaki Sawada
posted2023/11/25 18:30
藤井裕子さん一家。清竹くんや麻椰ちゃんも様々な出来事があれど、当地での生活を楽しんでいるようだ
「みんな足が速いし、テクニックもある。フットボールを良く知っていて、的確な判断ができます。気持ちもすごく強いです」
――自分の長所は?
「しっかりボールを止めて、蹴れるところ。次のプレーの予測や次に自分がやるべきプレーの判断も悪くないと思います」
――“今後、ここをもっと良くしたい”という点は?
「フィジカル、技術、プレーの選択のスピードと的確さなど、すべての点で向上したいと思います」
フラメンゴを退団した前後のことについては、さすがに聞けなかった。
「習い事と言っても遊びの延長のようなもの」
長女・麻椰ちゃんは、2017年8月、やはりリオで生まれた。このときも、裕子さんは出産直前まで仕事を続け、出産後、数カ月で復帰した。そして、清竹君が生まれたときと同様、リオ市内の練習には麻椰ちゃんを連れて行き、陽樹さんが面倒を見て、練習の合間に裕子さんが授乳をした。
――麻椰ちゃんは、いろんな習い事をしてるんだよね?
「そう。体操、柔道、ピアノ、水泳、スケートボード、ジャズダンス……」
一家が住むのはリオ南部の住宅地にある「コンドミニアム」と呼ばれるマンション群で、人工芝のフットボールコート、テニスコート、プール、子供の遊技場、庭園などが完備してある。
日本ではなかなか例がないであろう住宅施設で、マンションの管理組合などが敷地内で各種の習い事を催している。それらの受講費のほとんどがマンションの管理費の中に含まれており、事実上、無料で習うことができる。
ただし、裕子さんは「習い事と言っても遊びの延長のようなもの。日本の人が考えるような真剣なものじゃないんですよ」と説明する。麻椰ちゃんはこのようにも話していた。
――何が一番好きなの?
「体操。体を動かすのが楽しいし、色々なことができるようになるから」
リオはほぼ一年中が夏で、寒い日がほとんどない。灼熱の太陽を浴びて、清竹君も麻椰ちゃんも真っ黒に日焼けしている。日本ではあまり例のない恵まれた環境で、2人は伸び伸びと育ち、毎日を楽しんでいる。
藤井一家がそのような日常を過ごすとともに、裕子さんは柔道指導者としての実績を積み重ねている。その中で五輪金メダリストに輝いたブラジル人女性柔道家と、その姉にも話を聞いた。柔道を始めるきっかけが「もっと喧嘩が強くなれる」と語る姉妹が、人間的な成熟をどのように育んでいったのだろうか――。
<第5回に続く>