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《2023ドラフト新潮流》なぜ「社会人」より「独立」だった?「総合力は社会人ほど高くなくても…」スカウトが惹かれた“独立リーグの魅力”とは?
posted2023/11/18 17:02
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Hideki Sugiyama
2023ドラフトには、ちょっとした「異変」が起こった。
異変などと言っては、本人たちに失礼になるかもしれないが、現象としては、間違いなくいつもの年とは大きく異なっていた。
2位指名の後半だ。
千葉ロッテが日本海リーグ・富山の大谷輝龍投手(23歳・180cm82kg・右投右打・小松大谷高)を指名すると、阪神も四国IL徳島・椎葉剛投手(21歳・182cm85kg・右投右打・島原中央高)を続けて指名。独立リーグの選手が支配下ドラフト2位という順位で2人指名されたのは初めてのことだ。
これまで独立リーグの選手が上位指名されたのは、2013年の又吉克樹投手(香川オリーブガイナーズ・中日2位・現ソフトバンク)だけ。プロ入り後、中日、ソフトバンクのリリーフ陣の一角として奮投している。
「2位指名」された2人の独立リーグ選手
千葉ロッテ2位・大谷輝龍投手については、高校を卒業して最初に所属したJFE東日本の頃に、一度見たことがある。
入社2年目になる春のオープン戦。リリーフのマウンドに上がった大谷投手だったが、四球を連発して早々に降板した。荒れ球というよりは、ボールの抑えが利かずに、高く抜けるボールが多かった。
しかしながら、長いリーチのオーバーハンドからしなやかな腕の振りで、リリースのタイミングが合った時の快速球の角度とインパクトでの破壊力が印象的だったのは、よく覚えている。
その後、伏木海陸運送(高岡市)を経て日本海リーグ・富山サンダーバーズに入団。チームトレーナーの指導でトレーニングに励み、今夏のNPBファームとの実戦で、155キロ前後の球速帯で勝負を挑み、ほぼストレート一本で三振を奪ったピッチングが評価された。
そして、阪神2位・椎葉剛投手だ。
ドラフトのおよそ1カ月前、今季の独立リーグNo.1を決める「日本シリーズ」のような試合があって、その時に投げた椎葉剛投手の速球が凄かった。
パワーピッチャーにありがちな力任せがなく、程よい出力で腕を振っているから、リリースでの瞬発力が文字通り「MAX」。7割の出力で10のボールを投げてスライダーもベースの上で鋭く変化し、私は見逃したのだが、スコアボードに「159」の数字が出たそうだ。