だがジラルディ監督から、そんな気遣いは期待できなかった。結果を出せば起用してもらえるという方針ならまだわかりやすかっただろう。イチローもあるとき「結果を出さないとゲームに使ってもらえない。そうとらえてるけどね。結果を出していれば、そんなことはないわけだからね。それはわかりやすい理由だと、僕は思っているけどね」と話していたことがある。しかし実際は、結果を出してもベンチに座ったままの日が続いた。選手にしてみれば、どうやってモチベーションを保てばいいのかわからなくなる状況だったはずだ。

　それでも来る日も来る日も準備を続けた。

ジーターが絶賛した“イチローの姿”

　チームメートだったジーターは、そんなイチローの練習に対する姿勢をこう話したことがある。

「イチに関して一番驚くべきことは、決して休みを取らないということだ。試合のない日に球場に行ったら、彼が打撃ケージで黙々と球を打っているんだ。休みの日はセントラルパークに行って走り込みもしていると思う。常にストレッチをしているし、体のケアをしている」

「31番イチロー」という時代は、間近で見てきた筆者にとっては切なく、もどかしい思いもあったが、イチロー自身にとってその経験にどんな意味があったのだろうかと思い返すことがある。

「どういうことでもそうですが、今した経験、過去にやった経験がプラスになったかどうかは、未来の自分次第ですからね」

　ヤンキース2年目のシーズンが終わったとき、イチローはそう語った。あれからちょうど10年になる。

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イチロー38歳の苦悩「難しい時間を過ごしています」渡米後はじめて“ベンチの時間が増えた”ヤンキース時代…私が見た“背番号31”の戸惑い