と、ここまで書いてきて、そういえば……と思う。源田壮亮選手の母校・大分商高と、常廣羽也斗選手の母校・大分舞鶴高とは、広い道路一本挟んで、はす向かいだった。

WBCにも出場した源田とは同郷。雰囲気も似ている…？　©Naoya Sanuki

　外柔内剛は「投手・常廣羽也斗」のためにあるような言葉だと思ったものだ。

　ソフトバンク、西武から1位表明を得た國學院大・武内夏暉（185cm90kg・左投左打・八幡南高）の場合もそうだが、野球では無名の高校や進学校から、サバイバル激烈な東都大学リーグに進んで、4年間でエースにのし上がってきた者が軟弱な「心身」のわけがない。

　決勝戦で明治大を完封した6月の全日本大学選手権。

　そして、この秋、リーグ優勝を決めた日の常廣投手のピッチングだ。

　春のリーグ戦に続く2季連続の優勝がかかる一戦で。ドラフトを1週間後に控えて、ネット裏には「最終確認」に詰めかけた12球団のスカウトたちが、その投球に目を凝らす。

　すでに「広島1位指名」も公表されていて、さまざまなプレッシャーが常広投手の肩にのしかかるアゲンストの風の中の最終戦だったのに、日本大を5安打8奪三振6四球……9回を1失点に抑えて完投してみせたのだから、「お見事！」と脱帽の快投で締めくくった。

立ち振る舞いはクールな常廣だが、筆者はその奥に負けん気の強さを感じたという　©Hideki Sugiyama

垣間見せた常廣の「本当の素顔」？

　こんなことがあった。

　リーグ戦のある試合、勝者・青山学院大の代表として話していた常廣投手。終了時間が来て、敗れた側の代表選手たちとすれ違ったすぐ後、相手の先発投手をフッと振り返った彼が、一瞬、ニヤッとしたように見えた。

　私の見間違いなら、ごめんなさい……なのだが、そんな常廣羽也斗の横顔に、私たちには最後まで見せなかった彼の本当の「マグマ」を垣間見たような気がしている。

　常廣羽也斗投手のこの先に、幸多からんことを、心より願っている。