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「プライベートは全く知らない」驚きの告白も…バドミントン東野有紗が渡辺勇大とのコミュニケーションに悩んだ過去「喧嘩は一回もないです」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto
posted2023/11/11 11:01
直近のアジア大会では銀メダルを獲得、来年のパリ五輪では金メダルへの期待もかかる東野有紗
中学時代から知っている相手だからこそ、お互いに通じ合っているという感覚が生まれ、コミュニケーションの曖昧さにつながっていたのかもしれない。
また東野は、女子ダブルスとの違いも指摘する。
「女子ダブルスだと自分は伝えやすかったかな。男子だと『これ言われたら、やる気なくしちゃうかな。傷ついちゃうかな』と考えちゃったりする。女子だと自分も女子だから分かる部分はあって言い方も分かるんですけど、男子はちょっと難しくて、そこで悩んだりしたことはありました」
コーチの目には、一緒に試合で戦うにはコミュニケーションが不十分であるのが見て取れたのだろう。
「喧嘩は一回もないですね」
ただ一朝一夕というわけにはいかなかった。
「自分は伝えるのがへたくそというか苦手だったので、思っていても言えなかったことがたくさんありました。勇大くんが伝えてくれても、それに対して自分が伝えるのが難しくて。どうしても、伝えたら傷つくだろうってめちゃくちゃ考えて伝えることに迷ったり悩んだり。ジェレミーさんに相談したり、親にもどうやって伝えたらいいんだろう、伝えたいけど伝えられないって相談したりしました。親からどうアドバイスされたか、ですか? ただひとこと、『言えばいいじゃん』って言われました。それができないから悩んでいるんだよ、と思いましたけど(笑)」
それでも東野は、自分が直面していた壁を乗り越えていった。
「伝えないと勝てないなって思いましたから。伝えられるようになると自分もすっきりするようになったし、そこからステップアップできたので、伝えることの大切さを学んだと思います」
お互いに思っていることを伝えあうようになっても、「喧嘩は一回もないですね」と言う。
「意見がそんなに割れることもないんですけど、何よりも、どっちも『お前のせいだろう』というタイプではないので」
渡辺も東野も、相手に矛先を向けるよりも自分に向ける人であった。
「勇大くんに関しては当時もそんなにいらいらすることはなかったし、勇大くんだけでなく、すべてというわけじゃないけどけっこう許せますね。むしろ自分にいらいらすることが多くて」
「プライベートは今も全く知らないし、適度な距離感がいい」
そこには東野なりの努力と工夫があった。
「コミュニケーションで壁にぶち当たっていらいらしてしまう部分があったんです。そんなとき、親から言われた言葉があります」
その言葉とは――。