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「プライベートは全く知らない」驚きの告白も…バドミントン東野有紗が渡辺勇大とのコミュニケーションに悩んだ過去「喧嘩は一回もないです」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto
posted2023/11/11 11:01
直近のアジア大会では銀メダルを獲得、来年のパリ五輪では金メダルへの期待もかかる東野有紗
「人にいらいらしないように、道端で出会った人全員に『この人が幸せになりますように』って思え」
東野は続ける。
「なんか、にらまれたり舌打ちされることもあるじゃないですか。それでも『この人が幸せになりますように』と思え、と。そのときは『無理じゃない?』って思ったんですけど、やってみたら意外と誰に対してもいらいらしなくなって。そのアドバイスをもらったのは、ジェレミーさんが来てすぐくらいの頃でした」
コーチ、親からのアドバイスもいかしながら、練習、試合、あらゆる局面で渡辺とコミュニケーションをとるようになっていった。
「しっかりとれているなあと思えるようになるまでには、1年かな、1年半かな、それくらいはかかりました。東京オリンピックの前にはできるようになりました。ただ、プライベートは今も全く知らないし、適度な距離感というのがたぶんいいんだと思います」
東京五輪2日後にもらった「渡辺からのプレゼント」
2021年7月、東京五輪が開幕。大きな期待が集まった日本バドミントンの代表選手たちが苦しい戦いを強いられる中、東野と渡辺は7月30日、3位決定戦に臨み勝利。ミックスダブルスでは日本初のメダルを手にした。
翌日の記者会見で東野はこう語っている。
「(試合直後は)勇大くんと組んできた10年間の思いをすべてのせて、抱きしめました」
「組んだ瞬間から練習もしてないのにすごく息が合いましたし、コンビネーションもすごく良かったです。話したこともあまりないのに勇大くんとミックスを組んだときはすごく楽しくて、あの瞬間は忘れられないです。勇大くんとだから色々な会話ができて、ここまでやってこられたと思います」
メダルは、中学時代からの時間の、本格的に組んでからの真摯な努力の成果であった。
銅メダルを獲得した翌々日は、東野の誕生日でもあった。
「誕生日プレゼントでお茶碗をもらいました。リクエストしたわけではないです。自分で考えて買ってきてくれたんですよ。うれしかったですね」
でも、東京での銅メダルは、2人にとって通過点に過ぎない。
(続く)