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アイスW杯で「サラリーマン世界一」。
異色クライマー・門田ギハードとは?
posted2019/10/20 08:00
text by
森山憲一Kenichi Moriyama
photograph by
Kenichi Moriyama
東京オリンピックに向けてますます盛り上がりを見せているスポーツクライミング。
8月に東京・八王子で開かれた世界選手権の興奮もさめやらぬうちに、この10月26・27日には、千葉県印西市でワールドカップが開催され、世界の強豪が再び日本に集結する。
さてその一方で、もうひとつのクライミング・ワールドカップが開かれているのをご存知だろうか。「スポーツ」ではなく、「アイス」のワールドカップ。「アイスクライミング・ワールドカップ」である。
昨シーズン、そのアイスクライミング・ワールドカップで、決勝に進出した日本人クライマーがいる。この大会で日本人が決勝進出したのはじつに8年ぶりのこと。これ以前には、2人のクライマーが1回ずつ決勝に出たことがあるだけだ。
世界の最強国として日本が君臨しているスポーツクライミングと違って、アイスクライミングでは日本はまだまだ弱小国。そこに彗星のように現れたひとりのクライマー、その名を門田ギハードという。
「僕は『サラリーマン世界一』」
その名前と、日本人離れした風貌から想像できるとおり、門田はエジプトと日本のハーフ。ただし生まれも育ちも東京。もちろん日本語ネイティブであり、だれもがその名を知る世界的カメラメーカーの正社員でもあるのだ。
アイスクライミングの世界でも、ワールドカップで活躍するようなクライマーのほとんどはプロやセミプロ。クライミングと関係ない本業をもつ人物は、決勝進出者のなかでは門田をのぞけばいなかったという。
「なので、僕は『サラリーマン世界一』と言ってもいいんじゃないかと(笑)」
エリートクライマーでありエリートビジネスマン。その異色の素顔を追った。
ここで、アイスクライミングという競技について説明しておこう。
アイスクライミングというのは、もともと、凍った滝を登るための技術。ヒマラヤやヨーロッパアルプスなどの難しい高峰を登るためには必須のテクニックである。岩登りから発展したスポーツクライミング同様、この氷登りのテクニックを洗練させたものが、アイスクライミング競技というわけだ。