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3連敗のCSでカープ大瀬良大地が見せたエースの矜持と、新井監督が「みんなが認めたエース」と語った真意 

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前原淳

前原淳Jun Maehara

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posted2023/10/24 11:02

3連敗のCSでカープ大瀬良大地が見せたエースの矜持と、新井監督が「みんなが認めたエース」と語った真意<Number Web> photograph by JIJI PRESS

CS第2戦に先発し、阪神打線を7回1失点に抑える好投を見せた大瀬良だが、広島は抑えの栗林が打たれてサヨナラ負けを喫した

 自身3勝5敗と黒星が先行して迎えた7月1日のヤクルト戦は、初回いきなりサンタナに先制3ランを浴びた。チームの6連勝の好循環に水を差す立ち上がり。一方ヤクルトの先発は、2試合の対戦で計13イニングを1得点に抑えられていたピーターズだった。

 大瀬良は相手のエラーで出塁した3回、右足を大きく上げたピーターズの隙を突いてスタートを切り、二塁へのスライディングで盗塁を成功させた。

 試合前のミーティングでは、ピーターズ対策のひとつに足攻が挙がっていた。特に投手が走者のときに注意力が落ちるため、大瀬良にもスタートを切ることが許可されていた。

 投手の盗塁に賛否はあったが、新井監督は大瀬良の姿に賛辞を送った。

「投げるだけでなく、何でもいいからチームに貢献したいという献身的な姿が、野手の気持ちに火を付けました。何とかしようとする、ああいう姿が、“エース”なんだと思います」

 機動力を掲げるゆえに、投手にも盗塁を求めたわけではない。リスクを考えれば、投手に走らせてはいけないことなど分かっている。

 2005年5月17日の広島対ロッテ戦の光景が重なったのかも知れない。1点ビハインドの5回、2アウトから盗塁を成功させたのは、当時のエース・黒田だった。

もがき苦しんだ2023年シーズン

 努力と根性の時代に選手として這い上がった新井監督だが、指揮官としては先発投手のシーズンを通した球数を管理するなど時代に合ったマネジメントを重視している。チームに“フォア・ザ・チーム”の精神と戦う闘志を根付かせ、共有するには、先頭に立つ者の姿が何よりの道標となる。だからだろうか、いくら勝てない日々が続いても、新井監督は大瀬良を「エース」と呼んだ。

 今季、投手としての大瀬良の投球、パフォーマンスは登板を重ねても上がってこなかった。打線とかみ合わず白星を得られない登板もあり、苦しい日々が続いた。

【次ページ】 エースの背中

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