炎の一筆入魂BACK NUMBER
3連敗のCSでカープ大瀬良大地が見せたエースの矜持と、新井監督が「みんなが認めたエース」と語った真意
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byJIJI PRESS
posted2023/10/24 11:02
CS第2戦に先発し、阪神打線を7回1失点に抑える好投を見せた大瀬良だが、広島は抑えの栗林が打たれてサヨナラ負けを喫した
首位阪神を追い上げる最後のチャンスとも思われた8月15日からの本拠地での3連戦。初戦を任された大瀬良だったが、結果は4回5失点。チームは逆転勝利を遂げたが、頑張ってつくった笑顔にもどかしい思いが浮かんでいた。
看板に見合った数字が残らなければ、批判の声は大きく、そして厳しくなる。心ない言葉も大瀬良自身、見聞きした。
自分ではない誰かが投げたほうが……と思うこともあった。自信を失いそうになったことは1度や2度ではない。いなくなってしまいたいとすら思うこともあったという。そんな日々にも常に寄り添い、ときに尻を叩いてくれた家族の存在が前を向かせてくれた。
エースの背中
勝てない日々や打ち込まれる日々に、どう立ち向かっていくのか。そんな姿を見せることも大瀬良に課せられた使命だったように感じる。次の登板に向けてグラウンドを黙々と走り、ベンチではチームメートを鼓舞。何度打ちのめされても、立ち上がる強さを背中で見せてきた。
新井監督が「エース」と呼んだ理由はその姿に表れていた。
使命を受け入れ限界を超えるまで腕を振り、最後に這い上がった。あの日、甲子園で大瀬良は役割を完遂したのだ。
広島には床田寛樹や森下暢仁ら、来季以降の新たなエース候補がいる。彼らが「エース」と呼ばれる日が来ることを、大瀬良は誰よりも待ち望んでいる。