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「8球団からドラフト調査書」島根の“山の中にいた”18歳…三刀屋の髙野颯太とは何者?「巨人の岡本和真を思い出す」「球場が震えた衝撃弾」
text by
井上幸太Kota Inoue
photograph byKota Inoue
posted2023/10/23 06:00
島根にある三刀屋高校野球部のドラフト候補・髙野颯太
8月24日に全国最速でプロ志望届を提出すると、不調に苦しんでいた6月の市福山との練習試合を目の当たりにした4球団を含む、8球団から、ドラフト指名の可能性を示す「調査書」が届いた。國分監督が言う。
「変化球をバットの先で拾った、決して会心の打球ではなかったんですけど、あの一打で可能性がつながりました。この前、調査書に記入するために成績を整理して気づいたんですが、高校時代に出場した公式戦が約20試合。その中で7本のホームランを打っているんです。それも2年夏の準決勝、秋の中国大会、3年夏の石見智翠館戦だったり、勝ち進んでの試合や強敵から打っている」
参考にしている選手は「岡本和真」
三刀屋に調査書を持参した、ある球団のスカウトは、髙野をこう評価する。
「左手の手術をもう少し早く終えて、夏前にもっとアピールしてくれたら……とは思うんですが、振る力はあるし、秋の中国大会や夏の注目された場面で結果を残したことは評価できる。今は打力一本の評価で、指名するにしても後ろ(下位、育成)になるとは思いますけど、楽しみですよ。自分は浅野も見てきましたけど、彼はライナー系の打球で、髙野くんはもう少し打球が上がるタイプ。違った魅力もあると思います」
髙野本人の言葉を借りると、参考にしているのは岡本和真(巨人)。打球の上がり方、夏に再転向した三塁のポジションを踏まえても、選手としての完成形は、岡本の方がしっくりくるかもしれない。
右のロマン砲…ドラフト指名あるか
今回コメントを寄せてくれた球団の名は明かせないが、長打力向上を課題とし、若い右の大砲を熱心に探すチームにとっては、「上位で明瀬諒介(鹿児島城西)、森田大翔(履正社)らが指名できなければ、下位で髙野を狙う」などは、考えられるプランだろう。
指名されれば、三刀屋からは初のプロ選手誕生となる。高校野球生活について、髙野はこう振り返る。
「國分先生に自由にやらせていただいて、ここだから成長できた、アピールできたのは間違いないです。山の中にある公立校なんですけど、自分が少しでも有名にできたらなと思います」
26日のドラフト会議で、聞きなじみのあるアナウンサーの声で、「三刀屋高校」と読み上げられる。そして、プロで活躍し、「“みとや”って髙野の出身校だよね?」とファンの間で会話が交わされる。小さな町から描く大放物線が、そんな未来像を抱かせる。