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「8球団からドラフト調査書」島根の“山の中にいた”18歳…三刀屋の髙野颯太とは何者?「巨人の岡本和真を思い出す」「球場が震えた衝撃弾」 

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井上幸太

井上幸太Kota Inoue

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posted2023/10/23 06:00

「8球団からドラフト調査書」島根の“山の中にいた”18歳…三刀屋の髙野颯太とは何者?「巨人の岡本和真を思い出す」「球場が震えた衝撃弾」<Number Web> photograph by Kota Inoue

島根にある三刀屋高校野球部のドラフト候補・髙野颯太

疲労骨折でピンチ「スカウトの表情が…」

 正真正銘のドラフト候補に浮上した矢先、思わぬ逆風に見舞われる。躍進の秋から年が明け、社会人チームの練習に参加した2月初旬、左手を痛みが襲った。診断結果は左手有鉤骨の疲労骨折。骨折の度合いから即手術ではなく、安静にして経過を見る治療方針を立て、3月を療養に充てた。何とか「本人にとって大きなモチベーションになっていた」(國分監督)という高校日本代表候補合宿には参加できたものの、打撃練習に制限がかかるなど、左手の状況は上向き切らず、合宿から帰郷した後に当初は見送っていた手術を決断。左手にメスを入れたことで、4月中旬に行われた春の公式戦欠場を余儀なくされた。

 実戦復帰は5月下旬。練習では持ち味であるスイングの強さが戻りつつあったが、スカウトが視察に馳せ参じた実戦で結果が出ない。6月中旬の市福山との練習試合には、4球団のスカウトが訪れ、内2球団は管理職クラスが帯同。この試合で逆方向へ安打を放ったものの、差し込まれる場面が目立ち、スカウトたちの表情も芳しくなかった。國分監督が苦笑しつつ振り返る。

「春以降、ほとんどの試合にスカウトの方々が来てくださっていたんですけど、中々結果が出なくて。この市福山との試合で、『これは、(指名が)ないかもなあ……』と覚悟しました」

 悩める主砲に比例するように、チームの状態も上向かず、練習試合で負けが込む。さらに今夏の島根大会、初戦の相手が春夏合わせて12度の甲子園出場を誇る強豪・石見智翠館に決まった。

 4年ぶりに一般観覧が復活した抽選会で、唯一観衆のどよめきが起こったように、観る者からすれば“初戦屈指の好カード”。その一方、歯車の噛み合わない三刀屋にとっては間違いなく逆境だ。

ドラフト戦線“再浮上”の一発

 試合が日曜日だったこともあり、会場である松江市営野球場のバックネット裏は、注目の一戦、ドラフト候補を一目見ようと駆け付けた観衆で埋め尽くされた。その中には、セ・パ4球団ずつ、計8球団のスカウトの姿もあった。そこで、髙野がやってのける。

 1回表、髙野は緊張をほぐすように打席の横で数回ジャンプし、誰も踏んでいない右打席に向かう。2球目のカーブと思しき緩い変化球をすくい上げると、打球はレフトスタンドに突き刺さった。高校通算29号となる先頭打者弾を放ち、「風が来るような、今まで感じたことがないような」大歓声に包まれながら、ベースを一周し、咆哮した。

 試合はコールド負けで初戦敗退となった。だが、髙野は高校最後の試合で、左手故障の不安を払しょくし、ドラフト戦線に再浮上した。

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