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「ここからは自己満足のために」世界王者・宇野昌磨が宣言した新たなフィギュア観…ランビエル・コーチ「昌磨の芸術性は愛から生まれている」
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph byAFLO
posted2023/10/18 17:00
「カーニバル・オン・アイス」で今季のフリープログラムを披露した宇野昌磨
「ジャンプを頑張ることが正直、競技の順位、点数を求めるにあたって一番必要なことなのでこの2年間ジャンプを頑張りましたが、ここからは自己満足のために、自分の表現力を頑張っていきたいです」
その“自己満足”の満足感こそが、あの笑顔で手を振った場面なのだろう。表現力の追求に全力を投じることができる、その快感を味わっている笑顔だったのだ。
「結果でしか得られないものもありますが、結果を求めずに競技をやることによって得られるものは何なのか。色々と模索していきながら、皆さんにそういった姿を見せられればと思います」
そう語る笑顔は、柔らかだった。
昌磨の芸術性は、愛から生まれている
これまでも独特の世界観で魅了してきた宇野。彼がさらに求めていく表現力は、どんな広がりを見せていくのだろうか。それにはコーチのランビエルが昨季語った言葉もヒントになるかもしれない。
「昌磨の芸術性は、愛から生まれています。彼の周りには、彼を愛し、彼に芸術のオーラを与えてくれる人がたくさんいる。昌磨は、自分が得た愛のおかげで、情熱に満ちた動きをするのです。つまり昌磨の表現は、彼の内面から出てくる美しさやエレガントさなのです。何かの演劇や舞台に感情移入したり演じたりするのではなく、彼自身の自然な動きに美しさがある。その魅力を、彼はまだ理解していないかもしれません。私は、昌磨が愛すべき人間であること、そのものが表現になっている現象に、いつも感動させられています」
宇野の新たな旅は、始まったばかり。内面から出る芸術性と、心と、情熱と、さまざまな意識を融合させて、新たな世界観を作り出そうとしている。