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「ここからは自己満足のために」世界王者・宇野昌磨が宣言した新たなフィギュア観…ランビエル・コーチ「昌磨の芸術性は愛から生まれている」
 

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野口美惠

野口美惠Yoshie Noguchi

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posted2023/10/18 17:00

「ここからは自己満足のために」世界王者・宇野昌磨が宣言した新たなフィギュア観…ランビエル・コーチ「昌磨の芸術性は愛から生まれている」<Number Web> photograph by AFLO

「カーニバル・オン・アイス」で今季のフリープログラムを披露した宇野昌磨

「1位を目指すのではなくて、1位になれるような練習をしたいと思います」

 ちょっとした言い換えのように感じるかもしれないが、宇野にとっては180度意味が違った。世界一の練習をすればいい、という発想の転換。魔法の言葉だった。

 そこからの快進撃は、言わずもがな。22年世界選手権で初優勝すると、昨季はGPファイナルと世界選手権の2冠を達成。2度目のタイトルを手にした今年3月、溜めてきた思いが溢れた。

「僕は小さい頃から高橋大輔選手に憧れて、あんな風に表現のできるスケーターになりたいって思ってきました。いつしか、結果が出なくなった時期に『競技をやる以上、やっぱり結果を出したい』という気持ちが芽生えて、ジャンプを頑張るようになった。2年前まではまだ成績がでていなかったので、もっと成績を出したいというのが一番前に来ていました。でも、今の僕は成績がでたことを嬉しくは思いますけれど、成績を目指したスケートになってしまっているな、というのが率直な感想。僕が、面白い、楽しいと感じて憧れてきた高橋大輔選手のようなスケートを、今の僕が体現できているかというと、そうではない」

表現者として自分の魅力は何か

 それは、世界の頂点に立つことができたからそう思うのか、と問うと、うなずきながら答えた。

「トップになれたから、というのは、その通りです。自分のやりたかったことが一つ成し遂げられたからこそ、僕がもう一つ成し遂げたかった、表現者として自分の魅力は何かを自信持って言えるスケーターになりたいと思っています」

 平昌五輪からの葛藤は終わった。そして、今季からが、幼かった頃の宇野が目指してきた、表現者への道がスタートするのだ。

 そんな宇野が今季のショートに選んだのは、「I Love You Kung Fu」。振り付けはランビエルコーチ。すでに夏場のアイスショーで披露し、滑り込んできた。静かな曲に溶け込みながら、隠してきた情熱を爆発させるようなナンバーだ。

「ステファンの振り付けは、毎年すごく挑戦的。自分にとってちょっと難しいなと思える振り付けや、音楽を選んでくれます。今年も同様ですが、例年に比べると僕のやりやすい部分が前に出たものになっていて、例年よりクオリティの高いショートがお見せ出来ると思います」

自分が感動するようなフリーにしたい

 そしてフリーは、宮本賢二氏による「Time lapse/Spiegel im Spiegel」。宇野は「初めて聞いたときは『もう~』という感じだった」という。抑揚がなく、解釈の幅が広い曲である。

【次ページ】 自分が感動するようなフリーにしたい

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