同じように今季も先取点の欲しい場面や終盤の勝負どころで坂本や主力選手に送りバントのサインが出された。坂本だけではない。さすがに4番の岡本には出なかったが、丸佳浩外野手、大城卓三捕手や秋広優人外野手、助っ人のルイス・ブリンソン外野手ら3番、5番を任せた主力打者にも送りバントのサインが出された。

今シーズン、主力の坂本勇人にも送りバントのサインは出された　©︎SANKEI SHIMBUN

　ただそのサインにはもうメッセージはなかった。ただただ走者の塁を1つ進める、という戦術的な意味合いしかなくなっていた。点が取れないから、何とか得点シチュエーションをベンチワークで作り出さなければならない。そのための送りバントで、チームに伝えるべきメッセージ性はすっかり薄れてしまっていた。打てないこと、点がなかなか取れないことで、サインの意味はすっかり変わってしまったのである。

　だからきちっと決められず失敗も多かった。そしてたとえ得点圏に送れても、今度はなかなかタイムリーが出ない。その繰り返しだった。

「何かが足りない」と吐き出した、それが原監督のこの2年半の蹉跌である。

結果責任は監督が負う

　選手に力がないわけではない。ただ得点圏に走者を置いて、タイムリーがなかなか出ない。あれだけの打撃技術とパワーのある岡本ですら、その呪縛から逃れることができないままに2023年のシーズンを終えた。

　結果責任は監督が負う――その勝負の世界の鉄則通りに、原監督は今季限りでユニフォームを脱ぐ決断をした。

©︎Naoya Sanuki

　そして決断をした今、原監督はこう語る。

「一点の曇りもない。晴れ晴れとした気持ちです」

　巨人のあるべき姿、野球人としてのあるべき姿を求め、行動してきた17年間に悔いはない。