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「すいません、僕のせいで」202cm高橋健太郎が振り返る“あの苦い交代の記憶”…セッター関田誠大への絶大な信頼と“エゴ封印”ブロック
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byFIVB
posted2023/10/06 17:02
難敵トルコ撃破に貢献した高橋健太郎。決して万全なコンディションではないが、チームために身体を張り続ける
続くエジプト戦、高橋に出場機会はやってこなかった。しかもフィンランド戦と同様に2セットを難なく先取してからの逆転負け。「五輪予選は何が起こるかわからない」と念頭にあったとはいえ、チームには計り知れないダメージが残った。
わずか1日のレストデーを経て、迎えたチュニジア戦。ここまで2敗しているとはいえ、侮ることはできない相手であり、何より、手痛い敗戦から日本がどう戦うか。まさに正念場ともいう一戦で、再び高橋にチャンスが訪れた。肩に痛みが生じた山内が大事をとって欠場、高橋がスターティングメンバーに名を連ねたのだ。
そして開始早々、チームに流れを呼び込むプレーが出た。得意のブロックだ。
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トスを見て、上がった場所に素早く移動してコースを塞ぐスピード。抜群の高さ。優れた身体能力が評価されるが、実は一本一本のブロックは緻密な駆け引きと、準備の成果でもある。
「僕、とにかく映像を見るんです。リーグ中ならばその週に対戦するチームの試合を、10試合以上、ひたすら見て、こういう時はこう来るんだ、この動きをした時はここに打つな、と徹底的に叩き込む。打ってくるコースに対して準備するのではなく、むしろ自分がこう動いて、仕掛けて、この状況ではここへ打たせよう、というところまでイメージして試合に臨む。その準備をするための時間が好きなんです」
「ブロック賞をとりたいわけじゃない」
国内でのリーグ戦と異なり、五輪予選では映像を見られる時間も数も限られている。各国1~2試合程度しか見られなかったが、いかに仕留めるかではなく、どう跳んで手を出せばブロックタッチを取って自チームの攻撃につなげられるか。意識したのはそこだけだった。
「相手のデータを見て、前半はクイックを使ってくるのがわかっていたから、序盤は真ん中に跳ぶ。中盤からは(チュニジアの)9番がパイプに入るかどうかを確認して、そこに上がらなければ両サイドへ走る。それだけ徹底していました。東レで戦う時は自分がいかにブロックするか、そこで点を取るかばっかり考えているから、めちゃくちゃエゴが出ているんです(笑)。でも、代表にエゴは必要ない。ブロック賞をとりたいわけじゃなく、チームの勝ちをつかみ取りたい。もうほんと、考えるのはいかにタッチを取るか。そこだけでした」