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「これはマズい」「もはや恐怖」おにぎり1個800円…ラグビーW杯、フランス現地記者がトラウマになった“おにぎり事件”「最後にパリで感動する話」
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byGetty Images
posted2023/09/25 17:10
ラグビーW杯日本対イングランド戦が行われたニース。海岸も街並みも美しかった。“おにぎり事件”はこの街を出発したあとに起きた
なんとそれは「おむすび権米衛」だった。
東京西部、吉祥寺、武蔵小金井、そして立川にも店舗を構えるあの権米衛ではないか。Mくんが訪ねたのは「権米衛 パリ・パレロワイヤル店」である。
Mくんからの写真付きの報告は、私を驚愕させた。購入したのは3種で、サーモン、高菜、そして昆布である。
まがいものとは違う。スパイシーとか、枝豆とか、余計なものが入っていない。それを食したMくんは「めちゃくちゃホンモノでした。具沢山でした!」と大絶賛である。
そして私は送られてきたレシートに驚いた。
高菜は2.8ユーロ。サーモンと昆布は2.5ユーロなのだ!
安い。すにぎりの6割程度ではないか(※2.5ユーロ=約400円)。
これでMくんはおにぎりのトラウマから解放された。
本物はパリにあったのだ。
「大きい! 具が多い!」
そしてアイルランドと南アフリカが死闘を繰り広げた翌朝(この試合は傑作中の傑作で、私の現地取材経験試合としては五指に入る)、ついに私はパリの権米衛を訪れた。
ショーケースに美しくおにぎりが並んでいる! 私は5種6品を頼んだ。
高菜
鮭
梅干し
昆布
ピリ辛唐揚げ
お値段は、昆布とピリ辛唐揚げが2.50ユーロで、残りは2.80ユーロ。
もはやフランス物価慣れした私には、これだけでも感激である。
Mくんに分けようと、「箱をもうひとついただけませんか?」とお願いすると、お店のお兄ちゃんが「10ユーロするけど、いいかな?」と言ってきたので目を剥くと、「冗談、冗談!」と笑ってくれた。
リヨン駅でMくんと待ち合わせし、権米衛弁当を分ける。列車が遅延したので、ここで食べてしまおう。
大きい!
具が多い!
そして、これはおにぎりに相違ない、相違なし!
南仏から始まったおにぎりをめぐる旅は、パリで大団円を迎えたのだった。
<《現地の物価高》編から続く>