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「メッシは期待値を大きく超えていた」欧州発、“新たな指標”で分かった選手の真価<欧州サッカーのデータ最前線>
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byTakuya Kaneko/JMPA
posted2023/09/18 17:04
動き続けているスポーツのため、ゴール確率や貢献度など細かなデータ分析が進んでいない印象のあるサッカー。しかし、いくつか新しい指標が登場してきている
ドイツサッカー協会の本拠DFBアカデミーでデータ科学を担当するDr.パスカル・バウアーがドイツサッカー協会公認A級/プロコーチライセンス(S級相当)指導者を対象にした7月の国際コーチ会議で興味深い話をしていた。
「《DFが直接関与できないゴール正面からのGKとの1対1のシーン》を条件として、ブンデスリーガにおける過去データ全てを調べてみました。全部で7440シーンあったうち、ゴールとなったのはわずか31%! GKとの1対1は統計学的視点で客観的に見たら、《絶対に決めなければならない決定機》などではなく、3本に1本も決まらない難易度の高いシーンなんです」
バウアーによると7440シーンのうち、46%はGKがセーブしているという。ブンデスリーガにおけるGKのレベルの高さの表れであると同時に、1対1という場面だと実はパスという選択肢が減る分GKの方が対処しやすいシーンだという認識をこちらが持つことが大事なのだろう。
ゴールへの期待値を算出
意外な視座を与えてくれるサッカーのデータ分析。ここ数年、おなじみのゴール数やアシスト数だけではなく、ヨーロッパではエクスペクテッド・ゴール(xG)、エクスペクテッド・アシスト(xA)というデータが注目されているのをご存じだろうか?
直訳するとゴールへの期待値。ボールの位置、ゴールまでの距離と角度、GKとの距離と角度、DFの位置や数的状況などの条件からゴールになる可能性を、過去の試合におけるデータと照らし合わせて数値として出す。0に近ければ近いほどその局面からゴールになった前例が少なく、1に近ければ近いほどよりゴールが生まれたのと似たシーンを作り出したという指標だ。
例えばゴール前フリーでパスを受けて、GKも完全に逆を取られていて、後はボールを押し込むだけという局面では、エクスペクテッド・ゴール値は0.9ほどになる。わかりやすく確率論で考えると、《90%決めなければならないシュートチャンス》。このようにどんな状況から決めたゴールなのか、どんな状況から作り出されたゴールチャンスなのかがより明確になるので、欧州を中心に注目を集めているデータだ。