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「メッシは期待値を大きく超えていた」欧州発、“新たな指標”で分かった選手の真価<欧州サッカーのデータ最前線>
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byTakuya Kaneko/JMPA
posted2023/09/18 17:04
動き続けているスポーツのため、ゴール確率や貢献度など細かなデータ分析が進んでいない印象のあるサッカー。しかし、いくつか新しい指標が登場してきている
曖昧な「アシスト」をより明確化
よくよく考えると、ゴールの前の「アシスト」だってなんだか曖昧な指標ではないだろうか? アシストの数が多い選手はゴールを生み出す能力が高い選手という評価を受けやすいが、現状の計算方法だと偶然の入り込む余地もかなりある。
自分が出したパスがその後どういった形でゴールになるのかという意図もなく、何気なく味方に預けたつもりが、ボールを受けた選手がものすごいシュートを決めた場合でも、そのパスをした選手にはアシストがつく。FKの場面で味方からチョンと出されたボールを足で止めただけでも、シュートが決まればアシストになる。果たしてどこまでそれがゴールを生み出したプレーと言えるのだろうか?
サイドからドリブルで相手選手を2、3人突破し、GKを完全に引きつけて、ゴール前にいる味方に丁寧なパスを出してのゴールシーンと数字の上では同じ1アシストなのだ。ましてその選手がキックミスでゴールできなかったら、チャンスを作り出した選手には何の数字も残らない。
前述のバウアー氏はこう問題提起する。
「こうした計測方法は果たして選手たちにとってフェアなものなのでしょうか? 選手のクオリティを測るデータとしてゴールやアシスト数をチェックするのは必要ですが、それだけでいいのでしょうか? よりよい判断をするための助けになるデータとなっているのでしょうか? 主観的な側面からと客観的な側面から、サッカーというスポーツを見つめることが大切だと思いますし、そのためにxG、xAは一つの助けとなるはずです」
xG、xAで見てみるといろんな発見がある。例としてバウアーは壇上のスクリーンに2選手のデータを映し出した。昨季ボルシアMGでプレーしたフランス代表マルクス・テュラムという選手は6アシストをマークしている。一方、フランクフルトで鎌田大地や長谷部誠とプレーした元ドイツ代表マリオ・ゲッツェの記録は1アシスト。そのため攻撃的な選手にしては物足りないと指摘する記事も少なくなかった。でもxAで見てみると、テュラムはわずかに4で、ゲッツェは5.3とより多くのゴールが生まれやすいチャンスに絡んでいることがわかる。
鎌田と堂安で比較してみると…
同じくブンデスリーガでプレー経験のある日本人選手でいうと、鎌田はアシスト6をマークするも、xAだと3.56でゲッツェより数値が下がる。一方xG8.89で9ゴールをあげている事実は、確かな決定力があることの裏付けでもある。