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相手の大声援、痛恨の被トライ…なぜ日本は慌てなかった? 流と松田、2人のベテラン“異常な落ち着き”でブレなかった「局地戦」《ラグビーW杯チリ戦》
text by
多羅正崇Masataka Tara
photograph byKiichi Matsumoto
posted2023/09/13 17:00
チリ戦でゲームキャプテンを務めたSHの流。ベテランの安定感がテストマッチから続いていた悪い流れを断ち切ってみせた
キック時は会場内の大型ビジョンにカウントダウンが表示された。制限時間内に蹴らなければ無効となる「ショットクロック」だ。意識の隅を侵食する嫌なプレッシャーだったが、内的世界に焦点を当て、撥ねのけた。
「ショットクロックは、モニターが目に見える状態で蹴るのは初めてでした。ちょっと気にはなりますけど、そこも含めて、今日はプレッシャーの中でも自分のルーティンにフォーカスすることができて、結果に繋がりました」(SO松田)
そして背番号12を背負った32歳、2大会連続出場のCTB中村だ。
もう一度W杯の舞台へ。その想いを胸に、複数回の手術も乗り越えてきた。念願を成就させたCTB中村の心理状態は「やっぱり楽しい」だった。
楽しむ余裕を持ったベテランは、高い専門性を持つディフェンスで奮闘。アタックでは時にスタンドオフの位置に入り、配球役をこなした。大学の後輩2人と連携しながら、戦術を遂行した。
「(2人との連携は)良かったと思います。流と(松田)力也はリーダーシップも発揮していました」
次節以降の課題と修正点は…?
余裕があるから修正点も見える。CTB中村は試合直後にディフェンスの課題を語った。
「トライを取られた場面は、ターンオーバーが起こった時、ボールがこぼれた時。ディフェンスを整備するスピードは修正が必要。次のイングランド戦はキックが多くなるので、なおさらだと思います」
4年前の19年日本大会。日本はアイルランドとの第2戦で、静岡から世界に衝撃波を送った。今大会の第2戦の相手はイングランドだ。
次戦の展望を問われたCTB中村。平坦な口調でさらりと「(今大会の)試合を観ましたが、いけるなと思いました」と言った。
「相手(イングランド)がやることも、ウィークポイントも本当にクリアに見えています」
歴戦の猛者の言葉だから千鈞の重みがある。第2戦の舞台は、南フランスのニースだ。
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