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JリーグPRESSBACK NUMBER
元日本代表DF・秋田豊はなぜ“Jクラブの社長”になったのか?「これは“リアルサカつく”ですよ」「僕は顔が名刺だから」53歳のタフな挑戦
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byJIJI PRESS
posted2023/09/13 18:31
2021年、いわてグルージャ盛岡をJ2昇格に導き、J3の優秀監督賞を受賞した秋田豊。現在は同クラブの運営会社でオーナー兼社長を務めている
「これは“リアルサカつく”。楽しいですよ」
様々な場面で責任の大きさを感じつつ、秋田は「楽しいですよ」と笑みをこぼす。
「だって、これは“リアルサカつく”ですよ。サッカーコンテンツに関わりながらクラブを大きくすることができたり、チームを強くしたりすることができる。こんなに楽しいことはないですよ」
オーナーを兼務するからこそ、できることがある。それも、スピード感を持ってできることが。
「色々な意味で“出来上がっているクラブ”ではないだけに、自分のアイデアとか若い社員がやりたいことを、トライしやすい環境ではあります。自分たちが『これはいいな』と思ったら、すぐに動けますからね」
スタジアムの改修に先んじて、トップチームの環境を整備している。2025年春の完成を目ざし、クラブハウスの整備に乗り出しているのだ。会議室なども備える施設は、チームが使用しない時間は一般開放する予定だ。
「現状ではクラブハウスがなく、練習は複数の場所を転々としています。選手は練習環境を大切にするので、クラブハウスができることで、選手獲得の際のマイナス要素を減らすことができます」
会社経営は今回が初めてではない。2017年にトレーニング用のゴムバンドを販売する会社を立ち上げた。ビジネス感覚を磨いていく過程で、クラブ経営への興味が膨らんでいった。
「どんな業態でも、会社に価値を作っていくことが大事なんだろうと思うんです。『グルージャがこういう会社になれば、もっと価値を感じてもらえるんじゃないか』ということを常に考えている。スタジアムの改修はそのひとつです。改修によってクラブの価値が高まり、子どもたちが『自分もあそこでプレーしたい』と思ってくれる場所を作れたら……というのが我々の考えなのです」
オーナー兼社長として、「できることはすべてやる」をモットーとする。
「講演でもサッカースクールでも、スケジュールが合えばすべて受けて、いただいたお金はすべてクラブに入れます。交通費が持ち出しになることもありますけどね。僕は顔が名刺だから、メディアが集まる場所でも経済同友会でも、できる限り顔を出して挨拶をします。秋田豊の価値をグルージャと結びつけながら、グルージャの価値を高めようと思っているんです」