酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
ヤンキースGMもニコニコの「山本由伸2年連続ノーノー」沢村栄治らとも一線を画す“超大記録”なワケ…夏以降は無双の“異常な数値”
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byJIJI PRESS
posted2023/09/12 11:01
2年連続ノーヒットノーランを達成した山本由伸。日本球界では圧倒的なピッチングを見せ続けている
2年連続ノーヒットノーランは戦後、そして2リーグ分立後も誰一人なしえなかった大記録だ。山本由伸のノーヒットノーランは史上100回目でもあるが、画期をなす記録と言ってよいだろう。
山本の2つのノーヒットノーランをさらに詳しく見ていこう。
2022年6月18日(土)ベルーナドーム:西武戦 捕手:若月健矢
投球数102 打者28人 2対0 試合時間2時間45分
9奪三振 1与四球 内野ゴロ11 内野飛球2(1邪飛含む)外野フライ5
相手先発:平井克典(5回自責点1で負け投手)
最後の打者:代打・川越誠司(一ゴロ)
2023年9月9日(土)ZOZOマリンスタジアム:ロッテ戦 捕手:若月健矢
投球数102 打者29人 4対0 試合時間2時間23分
8奪三振 1与四球 1与死球 内野ゴロ13 外野フライ6
相手先発:美馬学(7回自責点3で負け投手)
最後の打者:2番 藤岡裕大(二ゴロ)
両記録ともに土曜日で、奇しくも2試合とも102球。また2試合とも敵地で記録しているのも、壮気あふれる山本らしいと言えよう。
投球フォーム改造→夏以降に無双の成績
昨年、山本の大記録の前に9回の打席で立ちはだかったのは、右手人さし指の骨折もあってスタメンを外れていた中軸打者の森友哉だった。森は今年、オリックスにFA移籍し、山本の快挙を4番DHとして支援。8回には4点目となる貴重な犠飛を記録している。めぐりあわせの不思議さを感じる。
試合時間が20分も短くなっているのは、山本の投球のテンポが上がったことを意味している。今年、山本由伸はフォームを改造し、左足を上げず、すり足のようにマウンドを滑らせるフォームにした。
その効果がどう出るか。注目されたが開幕こそ6回零封で勝利を得たものの、ここから5試合の失点は10、防御率は2.35。普通の投手ならこれでも優秀だが、山本にとってはやや不振と言ってよい。ロッテの佐々木朗希が快調だっただけに、3年連続の沢村賞は難しいかと思われたが、そこから調子を上げた。
〈今季の月間成績〉※9月は10日終了時点
4月 4試2勝2敗25.1回6球29振 率1.78
5月 3試2勝0敗21回6球22振 率2.15
6月 4試3勝1敗30回2球30振 率1.80
7月 3試2勝1敗24.2回3球26振 率1.46
8月 4試3勝1敗26回6球21振 率0.00
9月 2試2勝0敗16回5球17振 率0.00
夏以降、尻上がりに調子を上げていることがわかる。8月16日のソフトバンク戦では有原航平との投げ合いで、失策がらみで3失点し負け投手になっているが、自責点は0だった。これもあって8月以降は防御率は0.00、まさに絶対的なエースになっている。