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「手を出してみぃ!」抜き打ちチェックに野村克也がなぜかニンマリ…「反復練習」「長所を伸ばす教育」は本当に正しい? 名将が語っていた野球界の意識改革
text by
野村克也Katsuya Nomura
photograph byTamon Matsuzono
posted2023/09/23 11:02
自身の野球哲学を常に書き留めていた野村克也氏
「手を出してみい!」の抜き打ちチェック
南海入団直後、二軍監督がときどき、野手を集め、一列に並ばせた。「手を出してみい!」と、手のひらにマメができているかをチェックした。夜遊びばかりしている選手の手には、マメができない。
「なんだこの手は。女みたいな手をしやがって!」と怒鳴られていた。
私は手を出す前から得意満面。遊ぶ金がないから「野村はくそまじめやのう」と先輩に笑われても、合宿所で素振りばかりしていた。
「おう、野村。お前はすごい。みんなよう見ろ。これがプロの手だ」。プロで初めてほめられたのは、プレーではなく、マメ。それでも「プロの手か。だったらもっと頑張ってやろう」と思ったものだ。
「長所を伸ばす」に足りないもの
最近は「長所を伸ばす」指導や教育がもてはやされているが、私の考えは違う。一流の中でトップを目指すためには、「長所を伸ばすに は、短所を鍛える」という強い意思が必要だ。
球速には自信がある、もっとスピードを上げたい。そんな投手には 「コントロールこそ、ピッチングの基本だ」と言って聞かせる。制球力を身につけ、どのゾーンにも腕を強く振って投げられるようになれば、下半身の力も強化されて、最終的に球速も増す。ヤンキースに行く前の楽天時代の田中将大が好例だ。