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初代表で「体に触ることすら…」バングーナガンデ佳史扶がコロンビア以上に衝撃だった瞬間は?「僕は奪いに行く側」パリ五輪代表への野心
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byKiichi Matsumoto/JMPA
posted2023/08/25 11:05
バングーナガンデ佳史扶は日本代表3月シリーズ、コロンビア戦でA代表デビューを飾っている
「今でもあの試合のことを思い出すと、嬉しさとか興奮が込み上げてくるくらい、僕にとって大事な試合ですね」
尊敬してやまない「佑都さん」の動きとメンタル
父を尊敬してやまない佳史扶だが、チーム内で同じように尊敬し、メンタルの持ちようや物事の捉え方、考え方を学んでいる先輩がいる。
メンタルモンスターとして名高い長友佑都である。
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日本を代表する左サイドバックは、21年9月に11年ぶりにFC東京に復帰した。
「(太田)宏介さん、(小川)諒也くんから学べて、さらに佑都さんとも一緒にできるなんて、本当に最高の環境だなって思います。サイドバックとしてのプレーはもちろん、一番勉強になるのは、メンタル面ですね。佑都さんは36歳の今でも、『もっとうまくなりたい』と思っていることが伝わってきますし、実際、去年よりもキレが増しているんじゃないかって。
佑都さんはW杯の最終予選で叩かれた時期があったじゃないですか。FC東京でも控えに回ることがありましたけど、不貞腐れることなく、一喜一憂せずにいつもやるべきことを継続していた。だから、僕は絶対にW杯でも活躍するだろうなって思っていました」
実際にカタールのピッチで躍動する長友の姿を見て、嬉しく、誇らしく思ったが、その一方で、危惧の念を抱いてもいた。
この偉大なる先輩がW杯で燃え尽きて、引退してしまうのではないか――。
「佑都さんは『現役を続けるかどうかは、W杯が終わってみないとわからない』とずっと言っていたから、どうするのかなって。僕としてはまだまだ一緒にやりたかったから、めちゃめちゃ続けてほしくて。キャンプも最初、合流してなかったじゃないですか。そうしたら、契約延長が発表されて、僕たちもそこで初めて知ったんです。嬉しかったですね」
無理にでも声を出して殻を破っていかないと
迎えた23年シーズン、佳史扶はチームで絶対的な存在となり、日本代表に選ばれることを目標として掲げた。
だが、そのためには克服しなければならないことがあった。
「去年までは先輩たちに支えてもらっていたんですけど、その立ち位置のままではダメだなって。僕は声を出すタイプじゃないんですけど、そういうところで無理にでも声を出して殻を破っていかないといけないなっていうことは、今年すごく意識しています」
その言葉どおり、プレシーズンのキャンプでは積極的に声を出す佳史扶の姿があった。