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45歳引退…衰えてブーイングされても「老眼でも何でも、1分後には」なぜ“最強GK”ブッフォンは愛されたか「俺たちは勝利したんだ」 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2023/08/23 11:00

45歳引退…衰えてブーイングされても「老眼でも何でも、1分後には」なぜ“最強GK”ブッフォンは愛されたか「俺たちは勝利したんだ」<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

EURO2016のブッフォン。4つの年代をまたいで偉大な守護神としてゴールマウスに立ちはだかった

 国中に点在する“おらが村、おらが町”をユベントス一行が訪れるたび、小さな公営スタジアムやホテルはブッフォンをひと目見ようとする地元の人びとでいっぱいになった。

 2年前の夏、ブッフォンは20年ぶりに古巣パルマへ帰還した。「セリエAへ昇格させる。それが俺の最後の夢だ」と言って、現役を続けた。

ブーイングを浴びても、ブッフォンはブッフォンだった

 僕は再び2部に戻ったブッフォンを本拠地「エンニオ・タルディーニ」で見た。

 全盛期の反応や跳躍力はない。アスリートとしての衰えは明らかだった。

 折角前半でリードを奪っても、ゲームの締め方が身体に染み付いていない味方DFたちは、後半になるとビビリが入って最終ラインに穴を空けた。史上最高のGKといえども、なす術なく失点して勝ち点を逃す試合が何度となくあった。

 だが、ホームの観客からブーイングを浴びても、かつて目の前に鉄の壁を築いてくれたBBCトリオ(バルザーリ、ボヌッチ、キエッリーニ)がいなくても、ブッフォンはブッフォンだった。

 失点しても彼が顔をしかめるのは一瞬だけ、すぐに下を向く若い同僚DFに向かい“心配すんな”と親指を立てた。試合に負けた後も、ブッフォンは我が子のような年頃のチームメイトを率先してゴール裏スタンドまで出向き、応援の礼を欠かさなかった。

老眼でも何でも衰えを感じたら、その1分後には引退するよ

 2年目の昨シーズンは故障がちでそれも叶わなくなり、昇格の夢は叶わず終いだった。密かに抱いていたカタールW杯に行く野望も潰えた。

「老眼でも何でも衰えを感じたら、その1分後には引退するよ」

 ブッフォンが引退を発表した8月2日、パルマはセリエAの中堅サッスオーロとのテストマッチを行った。偉大なGKへの餞(はなむけ)か、パルマは1-0で白星を飾った。

 3日後、ブッフォンは新しい道を歩き始めた。

 FIGC(イタリアサッカー連盟)がイタリア代表チームの新団長にブッフォンを任命したのだ。今年1月に急逝したジャンルカ・ヴィアッリの後任という大役だが、代表での酸いも甘いも知り尽くしたブッフォンほどの適任者は他にいないだろう。

 目標はすでに定まっている。来年のEURO2024ドイツ大会だ。

「代表のユニフォームはずっと俺の人生の一部だった。W杯で優勝したときも、出場を逃したときもともに涙を流したかけがえのない存在だ。U15チームからA代表までアッズーリのあらゆる練習や試合は特別なもの。過去のタイトル歴や名声は関係ない。代表に必要なのは献身と懸命になれる姿勢だ」

 ゴールマウスに毅然と構える史上最高のGKを見ることはもうない。

 だが、グローブを脱いだブッフォンに新しい夢の炎が着火したのは間違いないようだ。

「ブッフォン武勇伝と心の病」編につづく>

#2に続く
お盛ん男女関係、やらかし伝説の一方で…24歳での「うつ病」から名GKブッフォンが抜け出すまで「若いうちは誰でも失敗するもんだ」

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