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総合商社、広告代理店、コンテンツ会社代表、海外でMBA取得…日本一に挑んだ“偏差値70超え”難関国立大アメフト部「最強世代」の“その後”
posted2023/08/26 11:04
text by
山崎ダイDai Yamazaki
photograph by
取材対象者提供
秋シーズンを終えた一橋大学アメフト部の面々からは、多くの選手がポストシーズンに行われる関東1部リーグのオールスター戦に選出された。
ただ、ある種の「お祭り」でもあるイベントだけに、1年間気負い続けてきた気持ちをスパッと切り替えるのはなかなか難しい選手もいた。ディフェンスリーダーを務めた常木翔は、シーズンが終わっても敗れた法政大との差について考えていた。
小さなミスはあった。イレギュラーなケガで流れが変わった部分もあった。
ただ、大局を見れば、こちらの準備した戦略はほぼ完ぺきに機能していたように見えた。それでも届かなかった王者との「12点」の差。考えれば考えるほど、その差の理由は見えてこなかった。
ようやくその本質らしきものに気づくことができたのは、オールスターの練習後のことだったという。
「この人たちは本当にアメフトが好きなんだな」
「練習が終わって、なんとなくみんなでグダグダする時間があるじゃないですか。そしたらそこで法政大の選手が『みんなでタッチフットしよう』って言いだしたんです」
シーズンが終わるまで、1年間ずっと厳しいトレーニングをやってきた。
目標達成のために日々節制し、辛い根性練習にも耐えてきた。ようやくそれが終わったというのに、コイツらは……まだ空いた時間にアメフトをやるのか。
「そこで『あ、この人たちは本当にアメフトが好きなんだな』と思ったんですよね」
もちろん常木もアメフトというスポーツが嫌いだったわけではない。
ただそれ以上に、目標を立て、そのための課題をチームの皆でひとつひとつクリアし、ゴールにたどり着いていく過程が楽しかった。猪股祐一監督の作り上げた、コンサル的な手法で課題を解決していく一橋イズムは、そのたびごとに発見があった。ただそれは裏を返せば、その触媒はアメフトでなくても良かったのだ。
そして、それに似た感情はその年の一橋の選手の多くが持っていた思いでもあった。