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15年前の「奇跡の一戦」を振り返る――“2年連続日本一”絶対王者・法政大に挑んだ“偏差値70超”の頭脳集団・一橋大アメフト部…勝負の行方は?
posted2023/08/26 11:03
text by
山崎ダイDai Yamazaki
photograph by
取材対象者提供
2007年9月1日。秋季リーグ初戦の相手は、専修大だった。
ここまで順調に進んできたこの年の一橋大だったが、実はこの初戦だけは不安があった。チームの司令塔であるクオーターバック(QB)を務めた加藤良樹が言う。
「専修大ってまさに“強豪私立”という感じのチームなんです。高校アメフト経験者や附属校出身のアスリートがたくさんいて、しかも1部でずっと戦っている経験値もある。90年代には関東制覇もしている。そういうチーム相手にどこまでできるのか――それはやってみないとわからない部分でした」
加藤はもともと中高とハンドボールを経験しており、中学時代は愛知県選抜の一員として全国制覇の経験もあるアスリートだ。ただ、だからこそリーグ初戦の入り方の難しさは人一倍理解していた。
映像を見る限り、フィジカルの数値を見る限り、客観的には負けるとは思わない。でも、勝負はやってみないとわからない。そんな思いがあった。
シーズンに入って分かった「本当のチームのレベル」
ただ、そんな彼らの危惧は、キックオフの笛が吹かれた直後の1プレー目で吹き飛ぶことになる。エースランニングバック(RB)だった渡辺裕介が振り返る。
「相手と当たった瞬間に『えっ?』てなったんです。『全然イケる!』って」
この年の一橋は、1年間、昨季の学生王者である法政大だけを追い続けてきた。彼らはそのスピードやパワーを常にリアルに思い描きながら、擦り切れるほど映像を見返してきた。日々のトレーニングでも、「これで法政大に勝てるのか?」が合言葉だった。誤解を恐れずに言えば、そんな彼らにとって並みのチームでは全く手応えがなかったのだ。
第1クオーターが終わるころには、早々にスタメンはベンチに引っ込んでいた。
初戦を圧勝した一橋は、その後も危なげなく勝ちを重ねる。そして4連勝の無敗同士で、とうとう前年の学生王者・法政大と相まみえることになる。