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6戦8本塁打! 岡本和真が“王・バース・バレ超え”歴史的快挙を達成してた…智弁学園18歳時からずっと「表情を出さずどっしり」主砲の風格
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byJIJI PRESS
posted2023/08/08 17:24
岡本和真はこの1週間、まさに「打てばホームラン」状態だった
筆者は東京ドームのヤクルト戦で2試合連続2本塁打を打った試合を観たが、力みなく、いとも易々とボールを運んでいるという印象だった。その点、フルスイングの村上宗隆とは対照的だった。
「本塁打の方向」を調べてみると昨年と大きな違いが
昨年と今年の岡本の本塁打の方向を調べてみると、明確な違いがあった。
2022年 30本
左翼16本/中堅6本/右翼8本
2023年 30本
左翼/26本/中堅3本/右翼1本
昨年は左翼に5割強の16本、中堅から右の反対方向にも14本のさく越えを打っていたが、今季は同じ30本塁打の内、左翼に90%近い26本も打ち込んでいる。反対方向は4本だけだ。
8月6日のマツダスタジアムの広島戦では、3本もの本塁打を左翼スタンドに叩き込んだ。
大谷翔平が屈指のホームランバッターになったのは、バレルゾーンで速い打球を打てるようになったからだが、同時にバーティカルスイング(バットの縦出し)で、やや打ち損なった打球でも反対方向にスタンドインするようになったからだと言われる。
しかし今季の岡本は対照的に「引っ張り」専門で、大きな打球を左翼席に飛ばしている。彼の場合は面で打つのではなくポイントでボールを確実に捉えているのだろう。大谷とは全く違う進化だ。
チームの遥かに大先輩の王貞治も完璧な打撃フォームでボールを引っ張り、右方向に精密機械のように本塁打を量産したが、岡本は王の「右バージョン」になろうとしているのかもしれない。
27歳の岡本和真は通算195本塁打で、巨人歴代9位。4番での出場試合数686は川上哲治(1658試合)、長嶋茂雄(1460試合)、王貞治(1231試合)、原辰徳(1066試合)に次いで歴代5位に位置している。レジェンドの入り口に差し掛かっていると言えよう。
思い出す「智弁学園3年時の岡本和真」の凄み
岡本和真と言えば、2014年夏の選手権奈良大会を思い出す。
当時18歳の岡本和真は智弁学園の中心打者であり、既に超高校級の評判が高かった。準々決勝まで順調に勝ち抜いた。
準決勝の相手は、大和広陵。実はこのとき、大和広陵には世界から注目されている投手がいた。