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6戦8本塁打! 岡本和真が“王・バース・バレ超え”歴史的快挙を達成してた…智弁学園18歳時からずっと「表情を出さずどっしり」主砲の風格 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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photograph byJIJI PRESS

posted2023/08/08 17:24

6戦8本塁打! 岡本和真が“王・バース・バレ超え”歴史的快挙を達成してた…智弁学園18歳時からずっと「表情を出さずどっしり」主砲の風格<Number Web> photograph by JIJI PRESS

岡本和真はこの1週間、まさに「打てばホームラン」状態だった

 立田将太という中学時代から知られた右腕で、有力私学からスカウトされたが、彼は甲子園ではなく「その先」を目指していたため「毎試合投げません」「投げ込みはしません」という宣言をした。そしてその宣言を理解してくれた大和広陵高校に入学した。

 当時、ジェフ・パッサンという「Yahoo! Sports」の記者が来日し、日本の「投球過多」について取材を続けていた。パッサンは、2013年春の甲子園で準優勝した済美の安樂智大(現楽天)が772球を投げたことに注目。「日本の高校生投手の酷使」について記事を書き、大きな反響を呼んだ。その過程で日本の高校野球では珍しい「投げない」有望投手、立田に注目してこれも取材していた。

注目投手・立田から放った逆転の二塁打

 2014年7月27日、奈良県橿原市の佐藤薬品スタジアムでの智弁対大和広陵の準決勝。「毎試合投げない」と話した立田は準々決勝では1イニングのみの投球で、満を持して岡本和真を擁する智弁戦に先発した。大和広陵は2回に5点を先制、しかし肝心の立田が乱調で、4回には岡本に逆転の二塁打を打たれる。100球をめどに投げたい立田だったが、後を託す投手がいないために170球以上を投げて6対11で大和広陵が敗北した。

 筆者は「1人の投手が、肩ひじを守りたいと『球数制限』を宣言しても、チームがその投手を支える体制を整備しない限り、実現できない」と痛感した。なお安樂や立田については、ジェフ・パッサンの『豪腕 使い捨てされる15億ドルの商品』(ハーパーコリンズ・ジャパン)という書籍に紹介されている。

 その立田の野望を打ち砕いたのは、智弁の4番、岡本和真だった。彼はこの試合4打数2安打1打点。また1学年下の廣岡大志(ヤクルト→巨人→オリックス)も2安打を放った。そして2学年下の村上頌樹(阪神)も代打で出場している。

 立田は2015年ドラフト6位で日本ハムに入団したが、一軍では1試合の登板にとどまり今はJR北海道でプレーしている。

 あのときの岡本和真も今と同様――表情を顔に出さず、どっしりと打席に立っていたのを思い出す。

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