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MLBドラフト指名・西田陸浮(22歳)が語る“メジャー目指して留学”の実情「英会話経験ゼロから…」「奨学金400万を“自ら獲得”」 

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樫本ゆき

樫本ゆきYuki Kahimoto

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posted2023/08/03 11:03

MLBドラフト指名・西田陸浮(22歳)が語る“メジャー目指して留学”の実情「英会話経験ゼロから…」「奨学金400万を“自ら獲得”」<Number Web> photograph by Getty Images

今年のMLBドラフトでホワイトソックスから11巡目指名を受けた西田陸浮(オレゴン大)

 西田は自らの力で約400万円の奨学金獲得(返済不要)に成功。人種のるつぼ、アメリカでは「セルフアピール」ひとつで運命が変わる。その手段にSNSが大いに役立ったそうだ。そのおかげで編入したオレゴン大でも、63試合5本塁打、37打点、3割1分2厘、25盗塁という実績を残していることから、実力に裏付けられたセルフプロデュースであることは間違いない。

MLBドラフト指名を受けるまで

 アメリカで必要なことは「ハングリー精神」だとよく聞く。この言葉からは「何度でも立ち上がる力」や「折れない心」というイメージを抱くが、西田の話を聞くと努力の「力感」が少し違うことに気づく。

「野球の努力ってあんまよくわからないんですけど、自分は『並み』だと思います。アメリカは結果で判断される国なので。あ、でも最初の2年はかなり“地道“な練習してましたね。道具もないし、雨が降ると外で練習ができない。一人で公園で素振りを毎日していました。2年間です。『それだけ?』って思うかもしれないけど、それだけのことを毎日2年間続けられる人ってなかなかいないと思います」

「努力したかどうかではなく、結果がすべて」。努力を美徳とする日本から見ると、戦い方の武器が全く違うことがわかる。西田のように努力したことを努力と思わない感覚も、上を目指す原動力として役立ったのかもしれない。

米大学は「ボールボーイのほうが自分よりデカい」

 今回のメジャー入りは、高校生以下のカテゴリーでプレーする選手たちの大きなヒントになったことは間違いないだろう。記者が西田のいる東北高校を取材したのは4~6年前。2年生のときは現オリックスの杉澤龍と二遊間を組み、打順は1番か2番を打っていた。パワーはなく「走り打ち」で活路を見出すような“ゴロ打ちキャラ”のイメージだったが(失礼)、3年になると3番を任されるようになり、夏の宮城大会準決勝では楽天生命パーク球場でホームランを打っている。

 この時のエース石森健大(東京農業大4年)は「2年生までリクウ(陸浮)は公式戦でホームランを打ったことがないと思うんですが、大学に行ったら木で5ホーマーですからね。夢あります。僕らの代は決勝で仙台育英に負けたけど、そこから世界を教えてくれたのがリクウでした。大学で野球をやめようと思っていた自分の心も変えてくれた存在です」とリスペクトする。石森と西田は連絡を取り合う仲だが「大学で(168cmの)自分の次に小さい選手が180cmもある」、「ボールボーイのほうが自分よりデカい」というような“爆笑”エピソードをSNSを通じてよく話してくれた。「根っからのポジティブ人間だから、海外でも適応できる。高校時代はガツガツ助言を言ってくれて何度助けられたかわかりません」と感謝する。

【次ページ】 メジャー目指して留学の「リアル」

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