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「彼らの野球が終わるわけではない」 敗戦で見えた大阪桐蔭“本当の強さ”の正体 今夏のチームに必要だった「ピース」とは?

posted2023/08/03 18:18

 
「彼らの野球が終わるわけではない」 敗戦で見えた大阪桐蔭“本当の強さ”の正体 今夏のチームに必要だった「ピース」とは?<Number Web> photograph by JIJI PRESS

エースで主将の“大黒柱”前田悠伍(左)とキャッチャーの南川幸輝

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沢井史

沢井史Fumi Sawai

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 一塁側ベンチから飛び出した履正社ナインと、ネクストバッターズサークルにいた小川大地がガクッと肩を落とす姿が重なった。

 7月30日。履正社と大阪桐蔭が相対した大阪大会決勝のゲームセットの瞬間、皮肉にも大阪シティ信金スタジアムの記者席から見る光景は、勝者と敗者のコントラストがくっきりと現れていた。

「先制点を取られて、しっかりとゲームを作っていこうとしていたんですけれども、履正社さんも粘り強く攻撃をされて、(こちらは)1点も取れていませんからね。もうちょっと食らいついて後半に持っていきたかったんですけれど、(履正社は)粘り強くいい野球をされていたと思います。打てなかったですね。チャンスをもっと作ることと、チャンスで打てること両方できませんでした。力負けでした。前田はしっかり投げてくれていたと思います」

 大阪桐蔭の西谷浩一監督は淡々と試合後の囲み取材に応じた。ベンチでうなだれる大阪桐蔭ナインの姿が、指揮官の後ろに哀しく映った。

実に8年ぶりに喫した「完封負け」

 0-3。履正社の最速150km左腕・福田幸之介が大阪桐蔭打線をわずか3安打に抑え、攻守で圧倒し、4年ぶりの甲子園出場の切符を手にした。大阪桐蔭の公式戦での完封負けは、2015年のセンバツ準決勝の敦賀気比戦以来(0-11)だという。

 今春のセンバツ大会では優勝候補筆頭と目されるもベスト4。帰郷後、約3週間後に初戦を迎えた春の府大会では、エースの前田悠伍をベンチから外すという思い切った決断を西谷監督は敢行した。過去には2018年のセンバツ優勝後にエースの柿木蓮(現・日本ハム)をコンディション調整、中心打者の藤原恭大(現・ロッテ)を足のケガのため同じように春の府大会のベンチから外したことがある。

 その後の春の近畿大会ではともに2人はベンチに復帰した。

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