「あのボディジャブは痛いんです」

　数々のスパーリングを思い起こしたかのように「あとは、あのボディジャブですね。あれはけん制じゃないですよ」と苦笑いを浮かべた。

――あのボディジャブはスパーでもありましたか？

「結構、もらいました。他の選手のボディジャブと違って痛いんです。硬いモノを押し当てられているような感じでダメージがある」

――あの左ボディジャブ、フルトンは効いているんですか？

「ボディジャブって、普通なら右肘で防げちゃうんですよ。すごく乱暴な言い方をすると、もらっても（顔は正面向いたままで）大丈夫なんです。ただ、井上選手のそれは衝撃が段違いなんで、どうしても下を見ちゃいますよ。僕はね、絶対にどこかでボディジャブから上（顔面）へのコンビネーションが来る、絶対に上への布石だと思っていました」

――1ラウンドから、分かったんですか？

「3、4発出した後ですね。僕もスパーで同じ展開があったので。ただ、予想と違ったのは、あんなに（8ラウンドまで）時間をかけるとは思わなかった。途中で『あれ、上に打ってこないな』と自信がなくなりました。僕がやっていたときって、3、4発出した後に上に打ってきた。防御のいいフルトンだったので、あれだけ長く引っ張ったのかもしれませんね。僕は顔面に右ではなく、左フックが来るかなと思っていたのですが」

――左のボディジャブから入って、顔面への左フック？

「井上選手はボディジャブと同じ動きで上にフックを打つのもあるんです。スパーをやっているときは、左フックか右クロスのどちらかが上に来るなと警戒していましたから」

＜後編に続く＞

#2に続く

「野球の硬球や鉄で殴られているような…」井上尚弥のパンチは「どう考えてもスーパーフェザー級以上」 “怪物と最も拳を交えた男”黒田雅之の証言

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