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ボクシングPRESSBACK NUMBER
井上尚弥の左ボディジャブは「他の選手と違って痛いんです」…“怪物と最も拳を交えた男”黒田雅之がフルトン戦を分析「絶対に上への布石だと」
text by
森合正範Masanori Moriai
photograph byHiroaki Yamaguchi
posted2023/07/30 11:03
スティーブン・フルトンのボディに左ジャブを突き刺す井上尚弥。“怪物と最も拳を交えた男”黒田雅之は「井上選手のボディジャブは衝撃が段違い」と証言する
井上尚弥は「距離を測る能力がすごい」
――身長差、リーチ差があるフルトンに対し、なぜジャブの差し合いで勝てたと思いますか。
「僕のイメージだと、距離感とタイミングですね。特にタイミングです。まず距離で言うと、井上選手はフルトンがジャブを打てば当たるか当たらないか、ギリギリ当たらないところに立っていました」
――パンチがギリギリ当たらない距離を、開始早々1ラウンドで把握できるものですか?
「やっぱり距離を測る能力がすごいんです。最初に(左手を伸ばして円を描くような)こういう動きをやっていましたよね。自分の手の長さと相手との距離、フルトンの頭はこのへんにあって、と測っているのかなと。実際、最初の方、井上選手のバックステップはパンチをもらわないようにちょっと大きかった。そのバックステップのときに(相手との)距離を見て、微調整したという感じがします」
――かつて、井上とのスパーで距離感のすごさを体感したことは?
「僕もスパーではしょっちゅう、右を打ったら空振りしていて、次の瞬間に左フックをもらっていました。あの、井上選手が得意なやつ、後出しの左フックです。スパーでまだ2発目の右とかに合わせてくるので本当に距離を測る能力がすごいなと思いました」
――そして、ギリギリの距離から、フルトンとジャブの差し合いになります。
「結構、相打ち気味にジャブを当てていましたよね。パンチに対してのカウンターというより、フルトンの足とか体の動き出しに対するカウンターだと思いました。カウンターってパンチに対してのパンチっていうイメージが強いですよね。でも拳に対して合わせるというより、体の動きに対して先に合わせるカウンターです」
――フルトンの体のどこかが動くか動かないくらいで、井上の方が先に踏み込む、と。
「はい。相手の動き出すタイミングです。僕は剣道もやっていたのでお互いに見合う場面が多かった。武道的な距離の取り方に近い雰囲気を感じましたね」