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ボクシングPRESSBACK NUMBER
「野球の硬球や鉄で殴られているような…」井上尚弥のパンチは「どう考えてもスーパーフェザー級以上」 “怪物と最も拳を交えた男”黒田雅之の証言
posted2023/07/30 11:04
text by
森合正範Masanori Moriai
photograph by
Naoki Fukuda
「怪物と最も拳を交えた男」の目に、スーパーバンタム級での“衝撃の戴冠”はどう映ったのか。7月25日、井上尚弥がスティーブン・フルトンを圧倒し、8回TKO勝利を収めた。その井上のプロテストの相手役など長らくスパーリングで拳を交えてきたのが、元日本2階級制覇王者の黒田雅之だ。引退から1年。この試合の分岐点とともに、現役時代に体感した「井上尚弥の衝撃」を訊いた。(全2回の2回目/前編へ)
フルトンが手詰まりになった「ある攻防」
黒田には、ぜひ見てほしい攻防があるという。第3ラウンドの25秒過ぎ。井上のボディジャブに合わせて、フルトンが右ストレートのカウンターを放つ。だが、井上はその上をいき、フルトンの右に対し、左フックのカウンターを打っている。カウンターへのカウンターだ。
――すごくハイレベルな攻防です。
「井上選手のボディジャブに対して、フルトンが打った、右の打ち下ろしって有効だと思うんです。でも、井上選手はその右にカウンターを合わせてきた。普通、ボディジャブを打つと頭は前の方に流れ気味になる。ただ、井上選手の頭は後ろで左フックを打つ体勢になっている。だから、狙っていたんでしょうね。そうするとフルトンはもう、ボディジャブに対して、右ストレートを打てなくなる。手詰まりの状態になっちゃうんです」
――井上は右が来ると予測して、狙っていたと。
「結局、打ったら動く、打った後に相手より先に動く、という基本なんですが。でも基本のレベルがちょっととんでもなく高いんです」
――井上は基本を忠実に積み上げてハイレベルなボクシングをしているイメージですか。
「はい、僕の中では。ただ、本当にそこまで基本を徹底されると言葉にできなくなってしまうくらいすごいレベル。理屈としては分かることばかり。でも試合で、しかもフルトンを相手にやるっていうのが恐ろしいです」