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メジャーリーグPRESSBACK NUMBER
「大谷翔平には劣るが、イチローや松井秀喜は超えている」ボストン在住記者が“優秀すぎる吉田正尚”を独自分析「ヨシダは平均の1.38倍も…」
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byGetty Images
posted2023/07/29 11:03
7月15日、特大ケーキで30歳の誕生日を祝福された吉田正尚。レッドソックスの主軸として後半戦も活躍が期待される
吉田の成績を見ると、間違いなく松井の1年目よりも優れた数字を残しています。吉田とほとんど変わらない年齢でメジャー入りした松井は2、3年目にメジャーでの自己最高の成績をマークしましたが、1年目は打率.287、16本塁打。現時点で打率.316、12本塁打(7月26日時点)という今季の吉田の方が明らかにペースは上です。
1年目に新人王、MVPを同時受賞したイチローと比較すると、やはりイチローの数字は吉田のそれを上回っていると考えるのが妥当なのでしょう。ルーキーシーズンに打率.350を残したイチローの高打率は目を引くものであり、守備範囲の広さ、肩の強さなども考慮すれば、両選手を同列にはならべられないのかもしれません。
ただ、あくまでオフェンスだけに絞った場合、話は少し変わってきます。
最近注目される「得点を生み出す力」
近年、私が好んで使用するwRC+という指標があります。wRC+は「Weighted Runs Created Plus」の略。それぞれの打者にどれだけ得点を生み出す力があるかを測る数字です。
打撃、出塁能力だけでなく、リーグの得点環境、パークファクター(球場補正値)なども考慮されます。つまりそのシーズンの傾向、スタジアムによる得点の入り易さも関係するということ。選手のリーグや時代を問わず、一律の条件で打者を比較評価できる数値としてwRC+は注目されているんです。
メジャーリーグの平均的な選手のwRC+は100。現状での吉田は138であり、平均を38%も上回る優秀な数値です。簡単にいうと、吉田にはリーグの平均的な打者の1.38倍の得点力があるということです。
松井は2年目に140という自己最高のwRC+を残しますが、1年目は109に過ぎず、やはり吉田の方がずっと上。それだけではなく、イチローの1年目のwRC+は124であり、ここでも吉田の方が上回っているのです。もちろんwRC+だけがすべてではありませんが、今季の吉田がいかに素晴らしいシーズンを過ごしているのかがこんな数値比較からも見えてくると思います。