炎の一筆入魂BACK NUMBER
「やってるつもりでも足りなかった」カープ優勝への重要課題、5年目のドラ1・小園海斗は今季こそ殻を破れるか?
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byJIJI PRESS
posted2023/07/31 11:00
今季はキャンプから野球への取り組みが変わった小園。新井監督はじめ首脳陣の期待値は高い
新体制となった今季、アピールに欠ける若手の中でも、我慢して起用し続けるだけの期待株だと目されていた。だが、新井監督は春季キャンプから遊撃の定位置を与えず、競わせた。遊撃だけでなく、三塁や二塁でもノックを受けさせた。
あえて突き放した。いずれチームを背負う選手と期待するからこそ、物足りないものを感じていたのかもしれない。
開幕戦は「一番遊撃」に抜擢されたが、以降4戦連続先発出場も無安打に終わり、5戦目以降にはベンチを温めるようになった。そして、まだ開幕間もない4月21日、小園に二軍降格が告げられた。
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早期降格は、結果よりも、その姿勢に原因があったように感じられた。
エリートがゆえの躓き
順調すぎるほどのキャリアと立場からか、球際や姿勢に隙が見え隠れし始めた。周囲から指摘される声も漏れ聞こえるようになった。当然、懸命にプロ野球人生をかけている本人に自覚はなかったが、立ち止まったことで気づきはあった。
「気持ちの部分で足りなかったところがあったかもしれない。自分ではやっているつもりでも、足りなかったのかも」
新井監督が求めたものは、まさにそこだった。新井監督は現役時代の自分の状況と重ねるように言った。
「小園は俺と似ているところがある。3つ、4つしかチャンスをもらえない選手がいる中、10のチャンスをもらってきた選手。そこに気づけるか。こういう経験は初めてかもしれないが、1球に対して、1打席に対しての姿勢も変わってくると思う」
入団時から知る指導者なら「それも小園」と見逃していたかもしれない。だが、今季は違う。殻を破り、いずれチームを背負う選手となってほしいとの期待から、新監督は見逃さなかった。