炎の一筆入魂BACK NUMBER
「やってるつもりでも足りなかった」カープ優勝への重要課題、5年目のドラ1・小園海斗は今季こそ殻を破れるか?
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byJIJI PRESS
posted2023/07/31 11:00
今季はキャンプから野球への取り組みが変わった小園。新井監督はじめ首脳陣の期待値は高い
二軍でも、内野ゴロで一塁までの全力疾走を怠ったり、内野フライでも捕球されるまで二塁を目指して走らなかったりすれば、新井良太二軍打撃コーチに厳しい声を浴びせられた。打撃の結果を怒られたことはなくても、取り組む姿勢には厳しい目を向けられた。
「大事なところだと気づかされ、それが今につながっている。いつも『悪いときに、自分の本性が出るよ』と言われていた。(自分を)見つめ直して上がって行けたかなと思います」
二軍で過ごした73日間は、今後の野球人生にとって大きな意味を持つ時間となるに違いない。7月2日ウエスタン・リーグのソフトバンク戦で放った三ゴロで、相手失策から二塁を陥れた走塁は、それまでに培われた意識と姿勢の賜物だった。試合後の全体ミーティングでは、新井コーチから名前を挙げて、認めてもらえた。
一軍再昇格が告げられたのは、その翌日だった。
全力は当たり前
7月4日に一軍に再昇格してから6試合続けてスタメンで起用され、復帰3戦目には決勝弾を放ったが、まだまだ数字は物足りない。それでも新井監督は変化を評価する。
「ファームから帰ってきて、打つ方、守る方、走る方と、ちゃんと区別してできている。球際が強くなっています」
7月11日巨人戦(東京ドーム)は再昇格7戦目で初めて先発を外れたが、「今日はベンチでしっかり声を出します」と献身的な言葉を口にした。凡打にも全力疾走する姿に、ベンチに帰れば先輩選手から「ナイスラン」と出迎えてもらえる。変わることの必要性とともに、喜びを感じているに違いない。
「全力でやるのは当たり前。当たり前のことをちゃんとやり続ければ、チャンスは巡ってくると思うので、おろそかにせずにやっていければ」
表情も変わってきた。監督やコーチ、チームメートに支えられながら、小園は真っすぐ高く伸びて行こうとしている。
経験ある選手が引っ張ってきたペナントレースも終盤に入っていく。優勝に向けてチーム力を底上げしていくためにも若手の台頭が望まれるが、その急先鋒は小園でなければいけない。
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