拳四朗の成長の要因はもうひとつ、「コンビを組んでからいい感じです」と本人も認める三迫ジムのトレーナー、加藤健太が本格的に担当するようになったことも大きい。チャンピオン獲得まで拳四朗は関西のジム所属ながら東京で試合を行うことが多かった。世界王座獲得後は拠点を東京に移し、三迫ジムで練習を続ける。父は「加藤君は的確な言葉で教えるし、拳四朗とは相性がいい」と高く評価し、試合中のチーフセコンドも任すようになった。

やさしい京都訛り、笑顔…威圧感はないが…

　それにしても、拳四朗はおよそボクサーらしからぬ風貌の持ち主である。リングを降りれば、ニコニコマークのようなスマイルを浮かべ、これがトレードマークになった。ボクシングは顔でするものではないにしても、相手に与える威圧感はない。これでやさしい京都訛りで話されると、相手はつい油断してしまうのではないか。これもカモフラージュになっているのかもしれないが、「実は気持ちの強さは親父以上」と言う関係者もいる。時に大胆ともいえる試合運びはなるほどと思えるものだ。

　チャンピオンを獲得した直後に寺地は「防衛を重ねて日本人世界チャンピオンの防衛記録を抜きたい」と大きな野望を口にしている。これまでV12の山中慎介をはじめ、何人もの名王者が挑んでたどり着かなかった具志堅用高の「13度防衛」。拳四朗はようやく7度と目標のまだ半分だが、日本の現役世界王者では最多の記録だ。

文春砲を食らい、断酒宣言

　チャンピオンとしての評価もようやく高まってきたところで、思わぬ失態をしでかし世間を騒がせる。昨夏、泥酔して酩酊状態に陥り、自宅と間違えて都内のマンション敷地内で他人の車をボコボコにしたという事件が週刊文春にすっぱ抜かれた。

　この初スキャンダルはかなり高くついたようで、12月に予定された防衛戦は中止。日本ボクシングコミッションから制裁金300万円と資格停止3カ月の処分を科された。これには本人も懲りて謝罪し、「もう今後現役中は酒を飲まない」とまで口にしている。ただ、酒好きが断酒宣言をして、本当に公約を守り切れるものなのか。本人は「これまでも試合の1カ月前から断酒してきたから」と自信を持っているが、自ら進んで重い荷物を背負ってしまったものだ。

　人生最大のピンチに立たされ、本人も相当落ち込んだようだが、今は名誉回復は試合でするしかないと開き直っている。次は4月24日に大阪で元日本王者の久田哲也を相手に8度目の防衛戦が予定されている。世界チャンピオンになって初のトリを務めるカード。これもモチベーションを高める要因になっている。

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