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「どうやって攻めようかと…」那須川天心のプロ2戦目“判定勝ち”はどう評価されるべきか? 浮かび上がった課題と知られざる「対戦相手の質」
posted2023/09/19 17:01
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Hiroaki Yamaguchi
那須川天心(帝拳)が9月18日、東京・有明アリーナでメキシコ・バンタム級王者のルイス・グスマンとの123ポンド契約(55.79キロ/スーパーバンタム級リミット1ポンド超)8回戦を行い、2度のダウンを奪った末に大差の3-0判定勝ち。ボクシング転向2戦目を勝利で飾った。「テーマは自分の中で“倒す”」と意気込んだ試合での判定決着。那須川はどのように成長し、これから何をつかもうとしているのだろうか。
デビュー戦とは違う姿を見せた那須川天心
「成長した姿は見せられて、多少満足している」
試合後の那須川の言葉に深くうなずいた。4月、日本バンタム級2位の与那覇勇気(真正)に判定勝ちした6回戦とは明らかに違う那須川がリングにいた。「どっしり構えた」との言葉通り、やや重心を落とした姿勢でグスマンに対峙すると初回、グスマンの右を外して左ストレートを一閃。サウスポーの鉄板とも言えるカウンターでいきなりダウンを奪ってみせた。
ここで一気にフィニッシュとはならなかったものの、その後も那須川は安定した戦いぶりを見せた。背の低いグスマンは距離を詰めようと前に出る。これに対し那須川は左右のステップワークで相手の前進をいなし、的確な左カウンターでポイントを重ねる。スピードに乗った動きはスムーズで、パンチは一戦目よりもシャープ。2回以降、左ボディも突き刺してグスマンにダメージを与えていった。
終盤、7回には左ボディ打ちでダウンを追加し、ノックアウト勝利への期待を膨らませる。最終8回、終了間際に決めた左でグスマンが尻からキャンバスに崩れたが、これはダウンの裁定にはならず。だが、3人のジャッジすべてが80-70というフルマークの判定でメキシコ王者を退けた。
「この5カ月、この日のためだけに生きてきた。人間は短い期間でもこれだけ成長できるというところを見せたい」
試合前、那須川はそう語っていた。「言われたことをやるだけだった」というデビュー戦以降、ボクシング一色という環境の中でトレーニングを続けた。ラスベガス合宿では元WBO世界スーパーバンタム級王者のアンジェロ・レオ(米)ら海外の猛者たちとスパーリング。帰国後は世界ランカーのスパーリング・パートナーをメキシコから招き、実戦練習を繰り返した。