Number PLUS MoreBACK NUMBER
ネイマール31歳は今からでも世界最高の選手になれる? PSG10番の超絶技巧とヤンチャな一面…”愛すべき天才”が再生する日はくるのか
text by
吉田治良Jiro Yoshida
photograph byGetty Images
posted2023/07/27 11:02
PSG加入から6シーズン目となるネイマール
明確な目標を定め、フットボールと真正面から向き合ったネイマールは、やはり別格だ。事実、カタールW杯制覇をターゲットに据えた'22-'23シーズンの前半戦は、PSG加入以来最高のパフォーマンスを披露。開幕から5試合連続ゴールを奪うなど眩い輝きを放ち、今をときめくキリアン・エムバペや、前シーズンから再び共闘したメッシを脇に追いやっている。
そして迎えたW杯本番でも、グループリーグ初戦で負った怪我から決勝トーナメントで復帰すると、前述のクロアチア戦では延長の105+1分に華麗なワンツー2連発で中央を切り裂き、一時は勝利を確信させるスーパーゴールもねじ込んでいる。
悪夢の逆転負けでサポーターやメディアの槍玉に
ただ情熱の大きさゆえ、目標に到達できなかった時の失望も人一倍大きい。そこからもう一度前を向き、新たな目標を設定するまで、誰よりも多くの時間を必要とする。
怪我で自身は出場できなかった準決勝でドイツに1-7と惨敗した地元ブラジルでの'14年大会、あからさまなダイブを連発して「自意識過剰のシミュレーター」と世界中から顰蹙を買った'18年大会も含め、過去3大会のW杯にいい思い出は少ない。
さらにPSGでのCLも、悲劇的な敗北の連続だ。'18-'19シーズンはマンチェスター・Uに2点のアドバンテージをホームでひっくり返され、'21-'22シーズンのR・マドリーとのラウンド16でも、第2レグの前半でトータル2点のリードを奪いながら、後半に3失点。悪夢のような逆転負けを喫するたびに、背番号10はサポーターやメディアの槍玉に上がった。
そうやって、丹念に並べてきたドミノが、あと少しで完成という段階で倒される悲劇に、繰り返し見舞われてきた。あるいはメッシなら、心折れることなくまた一からドミノを並べ直していくのだろう。しかし、ネイマールの心は、そこまで頑丈にはできていない。悲しみや怒りの感情が、フットボールの喜びを呑み込み、そして誘惑に抗えぬまま現実から逃避するのだ。