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王者オリックス「最強ブルペン」の作り方…山崎颯一郎25歳が明かすリリーフ陣の雰囲気「比嘉(幹貴)さんや平野(佳寿)さんのおかげで…」
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byTakashi Shimizu
posted2023/07/22 17:01
昨年の日本シリーズではリリーフで4試合に登板して日本一に貢献した山崎颯一郎。WBC代表にも選ばれた
14年目のセットアッパーは、いつものように“僕はたいしたことしていません”感を漂わせる。だがそうした謙虚で、年の離れた若手にも壁を感じさせない人柄が、ブルペンの居心地のよさを生み出す。普段は何を言っても怒らないのではと思ってしまうほど穏やかな空気をまとい、日本一のビールかけでは弾けた踊りでファンの話題を独占するなどノリも抜群のムードメーカー。
比嘉自身、「若い子たちも、しゃべりづらくはないと思います。本田(仁海)なんてめちゃくちゃいじってきますから」と笑う。
日本シリーズ5試合に登板、許した安打はわずか1本
一方で、試合を見ながら「このバッターさっき変化球打ったね」、「この選手今日ストレート弾けてるね」と話しかけ、さりげなく情報を頭にインプットさせることも。
「この世界はマウンドで結果を残してナンボ。そこで力が入りすぎたらダメだと思うので、スイッチが入るまではリラックスできるように。別に教えるわけじゃなく、こんな感じか、と自分で吸収してくれれば」
比嘉自身もそうして結果を出し続けてきた。ピンチの場面でマウンドに上がれば見事な火消し職人と化す。サイドスローの独特のフォームから、巧みに緩急をつけながら内外角に投げ分け打者を手玉にとる。
昨年の日本シリーズでは、初戦の5回裏にエース山本由伸が緊急降板した際、急遽マウンドに上がり、3人を完璧に抑えてチームの動揺を鎮めた。その後の試合でも1死一、三塁などシリーズの行方を左右する場面で呼ばれ、1人の走者も還さなかった。7試合中5試合に登板し、許した安打はわずか1本。比嘉なくして日本一はなかった。
オリックスブルペンのいい伝統
日本ハムで長年コーチを務め、昨年からオリックスの投手コーチとしてブルペンを担当する厚澤和幸もベテラン陣の人間性を絶賛する。
「野球人としてはもちろん、2人とも一社会人として、大人として、『こんなにいいベテランがいるんだな』と思いました。オリックスブルペンのいい伝統は2人が作ってきたんだろうなと感じたし、ライバルの日本ハムから来た僕をすんなり受け入れてくれたのも2人。僕のアドバイスに順応してくれる素直さもあって、非常に助かりました」
後輩たちへの接し方はもちろん、チームを第一に考える度量の大きさに驚かされた。
「普通なら平野が行く9回に、颯一郎を選ばせてもらった時も、他の球団ならヘソを曲げるベテランもいると思うんですが、平野はまったくそれがない。『全然いいですよ。気にしないでください』と。あれだけの実績を築き上げてきた人が、あんな大人の対応は、なかなかできそうでできないこと。比嘉の場合はワンポイントで行くことが多いんですが、準備をしても出ないで終わる場面もある。でも彼もまったく同じ。気にしないでくださいと。あれだけ心が広いと、あの2人に携わったブルペンコーチはだいぶ甘えたんじゃないかなと思います(笑)」
一方でその厚澤が、リリーフ陣が働きやすい環境を整えている。
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