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「俺は腹をくくったよ」総工費40億円を自前で調達! 岡田武史が語る今治里山スタジアム建設秘話「FC今治は単なるJクラブではない」
 

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二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byToshio Ninomiya

posted2023/07/23 17:00

「俺は腹をくくったよ」総工費40億円を自前で調達! 岡田武史が語る今治里山スタジアム建設秘話「FC今治は単なるJクラブではない」<Number Web> photograph by Toshio Ninomiya

今治里山スタジアムでインタビューに応じたFC今治会長の岡田武史(66歳)。建設費40億円をいかにして自前で調達したのか

 自然と共存でき、365日人が集まるスタジアム。コンセプトにした「里山」を、そのままスタジアムの名前にした。FC今治の企業理念は「次世代のため、物の豊かさより心の豊かさを大切にする社会創りに貢献する」。今治里山スタジアムは、共助の社会づくりの象徴としてなくてはならないと岡田は位置づけた。

 当初は2020年夏に着工予定であったが、コロナ禍の影響による資材不足の問題など1年以上も遅れることになる。

 愛媛県の海事都市、今治市は人口約15万。過疎化、高齢化の地域課題を抱えるなか、市から土地を無償貸与とあっても、自前で建設費40億円を調達していくというのは相当にハードルが高い。かつコロナ禍の直撃がより状況を難しくさせていた。しかし岡田のなかに撤退という文字はなかった。

「議会で土地の無償貸与が決まって、設計会社に頼んだ設計図もできて、(施工)業者も決まって、さあこれからっていうときに“ごめんなさい。お金が集まりませんでした”って言えるわけがない。俺は腹くくったよ。

 コロナ禍で確かに調達は無理だろうって言われたこともあったよ。でも自分のネットワークがある首都圏のスタートアップやベンチャーからいろいろと声を掛けていったわけ。AIの言うとおりに生きる時代が来たら、失敗しなくなるだろうね。でも周りと助け合って失敗や困難を乗り越えてこそ、絆って生まれる。緑豊かに心豊かに、人々が集まれる場所をつくりたいんだって口説いていったら、次々に賛同してくれた。そうしたら今治のほうでもポンポンと集まり出した」

 2021年12月には経営者、投資家、地元企業を引受先に、約13億円を第三者割当増資で調達。Jリーグクラブでは異例の規模となった。翌年4月、9月にも第三者割当増資等を実施。ふるさと納税、里山ネームプレートの購入も資金に充て、残りの約20億円は金融機関からの融資でまかなった。

なぜスタンドとピッチに柵を設けなかったか?

 腹をくくって伝えた熱意が、人々を動かした。遅れていた工事は2021年11月に着工し、今年1月にようやく完成の運びとなった。

 岡田は言う。

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