スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
「大谷翔平の電撃トレード、可能性が一番高いチームは? 全29球団をランキング化してみた」現地アメリカ人記者の本音予想「藤浪と“再会”もあるのか」
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byAFLO
posted2023/07/20 17:05
アメリカメディアも連日報じる大谷翔平の移籍可能性。トレード期限は日本時間8月2日だ
■1位 レンジャーズ
今季のレンジャーズは好調だ。オールスターに選ばれた選手たちがずらりと並び、州内のライバルであるアストロズを抑え、地区首位に立っている。
しかし、穴がある。大金を投じて獲得したジェイコブ・デグロムが今季絶望となり、ポストシーズンを制するにはエースが必要だ。打線はすでに破壊力抜群だが、大谷が加われば鬼に金棒だ。
レンジャーズは大谷を獲得するのに大きな犠牲を払うのを厭わないと複数の記者が予測している。ただし、エンゼルスとは同地区の球団であり、モレノ・オーナーの承認があればという条件がつく。今回のトレード劇、オーナーが大きなファクターなのだ。
やっぱり気になる「エンゼルス残留の条件」
いろいろな噂があるが、もしトレードされるなら、アメリカン・リーグの球団であって欲しいと思っている。とにかく本塁打王を獲得して欲しいので、ナショナル・リーグはノーサンキューである。
ただし、大谷の契約条項のなかには特定の球団に対するトレードの拒否権、「ノートレード条項」が含まれていないので、大谷自身がコントロールできる問題ではない。
しかし、私はエンゼルスの残留の線が濃くなったと思っている。ヤンキースに3連勝し、49勝48敗として勝率5割を超えた。地区首位のレンジャーズとは10ゲーム近い差があるので追いつくのは難しいとしても、ワイルドカードスポットには4.5ゲーム差なので、ギリギリ狙える位置で、諦めるレベルではないのだ。
もしも、ヤンキースに敗れて借金が膨らみ、ワイルドカードスポットにも5ゲーム差以上がついていたら、トレードの可能性は高まっていただろう。エンゼルスはギリギリのところで踏みとどまっている。
毎日、その日の結果次第で、「トレード・メーター」の目盛りが上下しているような状態なのだ。
このあと、トレード期限(日本時間8月2日)までの対戦相手はパイレーツ(42勝54敗)、タイガース(43勝52敗)、ブルージェイズ(53勝43敗)と続いていく。常識的には、sellerであるパイレーツとタイガースには勝ち越せるチャンスは高い。そうすれば、エンゼルスは大谷を放出する理由がなくなる。むしろ、戦線離脱中のトラウトが帰ってくるまで頑張る、という流れになるかもしれない。
私がこの原稿を書いている時点では、エンゼルス残留の可能性が高まっているし、ひょっとしたら、再契約を結ぶチャンスもあるのではないかと思ってきた。なぜなら、若手野手が充実してきているからだ。
ショートのネト、外野のモニアック、いまは故障者リストに入っている捕手のオホッピーなど、オールスターになれる可能性を秘めている。特にモニアックとオホッピーについては、去年のトレードでフィリーズから獲得した選手たちで、クリエイティブな補強となっている。
先発陣が見通せない不安はあるが、以前よりも明るい未来が見えてきているのだ。
トレードの話は面白いから、噂が飛び交う。しかし、このままエンゼルスが粘っていけば……大谷は残留の可能性が高まる。
いったい、どっちに転ぶんだ?
エンゼルスの試合から目が離せなくなっている。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。