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男子バレー好調なのに「楽しいと思うことはほとんどない」石川祐希、高橋藍、西田有志…豪華な攻撃陣を操る“強気なセッター”の知られざる葛藤 

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田中夕子

田中夕子Yuko Tanaka

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posted2023/07/10 11:09

男子バレー好調なのに「楽しいと思うことはほとんどない」石川祐希、高橋藍、西田有志…豪華な攻撃陣を操る“強気なセッター”の知られざる葛藤<Number Web> photograph by FIVB

ブラン監督や石川祐希らアタッカー陣に絶大な信頼を置かれるセッターの関田誠大(29歳)。目標のベスト4入りへ、司令塔の手腕に期待したい

 ただ漠然と見ていると、関田のトスは「上げたいところに上げる」ように見える。小野寺が“遊び心”と称するのも納得だ。しかし、その一本、一本には緻密な計算と、ネットを挟んだ相手との息つく間もない駆け引きの応酬と心理戦が繰り返されている。

「今は相手のブロックを見る、確認することにトライしているんです。(ブロックを)見ないでただ自分が上げたいところに上げて勝てるならいいですけど、上のレベルではそれじゃあ絶対に勝てない。だから僕はブロックがいないところに上げたい。それが結果的に自分の上げたいところになる、というのが正解だと思うんですけど、それがめちゃくちゃ難しい。でもだからこそ、僕はそこを突き詰めたいんです」

 相手のブロックを見て、どんな戦術で跳んでくるのかを見極める。自分の目と勘、ベンチやリザーブの選手たちの助言を受け、その時々で「これだ」と思う攻撃を選択する。うまくハマる試合もあれば、相手ブロックがいないと確信して上げたのに2枚来ることもある。相手のブロック枚数を減らすことだけ考えれば、ただ自分本位にトスを速くすればいいかもしれないが、それではアタッカーが準備しきれず、せっかくの打点やテクニックが活かしきれない。

 一方を見れば答えは異なり、また他方を見れば選択も変わる。試合の中で修正を余儀なくされるのも日常茶飯事だ。

「(相手の)ブロックばっかり見ていると、アタッカーに打たせ切れるトスが上がらなかったり……ほんと難しい(笑)。打開するのは結局、“勇気”ですよね。相手じゃなく自分の型にハメるためには、勇気をもって使うべきところは使う。そこは僕が、頑張らないといけないところなので」

「上げたい」でも「上げなきゃ」でもない、“究極の理想”を求めて突き詰めている。

「石川に気持ちよく打ってもらいたい」

 1位で突破した予選ラウンド以上に、より過酷さが増すファイナルラウンドは「結果」と「経験」を得られる絶好の舞台でもある。

 開幕前と異なり、10連勝した日本に対する世界の見方は変わった。特にベストスコアラーランキング2位の石川を筆頭に、日本の攻撃陣への対策はこれまでの比にならないほど厚みを増すはずだ。だが、それも関田にとっては想定の範囲。

「石川が前衛にいれば当然相手(ブロック)は2枚来ます。彼は非常にうまい選手なのでそこでフェイントしたり、リバウンドを取ってくれるけれど、基本的には打って決めたい。ブロックが集まっても上から打って、点が取れる選手だと僕は思っています。だからこそ、僕は彼のその力を求めたいし、極論、セッターは気持ちよく打ってもらいたい、というのが一番です。だから僕はそこを求めたい。苦しいことも経験だと思いながら、いろんなことを試していくだけです」

 躍動する日本代表の中心にいるのは、まぎれもなく関田だ。たとえ目立たずとも、むしろ目立たないからこそ。

 関田が描く理想のバレーを展開する時、日本代表はどれほど強くなるのだろう。そしてどれだけ世界を魅了するだろう。そう遠くないであろう未来を想像するだけで、ワクワクが止まらない。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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