バレーボールPRESSBACK NUMBER
男子バレー好調なのに「楽しいと思うことはほとんどない」石川祐希、高橋藍、西田有志…豪華な攻撃陣を操る“強気なセッター”の知られざる葛藤
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byFIVB
posted2023/07/10 11:09
ブラン監督や石川祐希らアタッカー陣に絶大な信頼を置かれるセッターの関田誠大(29歳)。目標のベスト4入りへ、司令塔の手腕に期待したい
ブラン監督は、今シーズンの代表活動がスタートした当初から「関田はファーストセッターとして考えている」と明かしてきた。
日本代表初選出は2016年。当時の立場はセカンドセッターで、リオデジャネイロ五輪の出場をかけた最終予選もほぼ出場機会はなかった。しかしそこから着実に成長し、一つ一つ実績と信頼を積み上げて、東京五輪や昨年の世界選手権では正セッターの座を勝ち取ってきた。これまでの経緯や現在の関田のプレーを見ればブラン監督の起用法には納得できる。
だが、世界に目を向ければ、セッターというポジションでも身長2mクラスの選手が増えており、ブロック面においては175cmの関田はウィークポイントにもなりかねない。その観点から関田がファーストセッターであることに異論を唱える声もあるのも事実だ。
それでもブラン監督は、関田以上にアタッカーを活かしきれるセッターはいないと判断し「ファーストセッター」と公言した。選手にとっては何よりの評価ではあるが、本人はその分の重みもしっかりと感じ取っている。
「必要とされているのは素直に嬉しいです。でも、そうなるとプレッシャーもあるし、そもそも自分で(プレッシャーを)かけますよね。だって、これだけいいアタッカーが揃っているのに、もし勝てなかったらどう思うか。みんなが思う理由は1つじゃないですか」
「強気なセッター」の知られざる葛藤
抜群の技術に裏付けられた関田のトスは、時に大胆で相手の意表を突く。得点が決まらなかった選手を連続して使う場面や、“ミドルでやり返す”シーンもよく目にする。だから関田を語る際、多くの人が「強気なセッター」と言う。確かに相手が世界王者だろうと、プレッシャーがかかる試合の中でこそ自由にプレーする姿は生き生きとしている。
しかし、そんな「楽しさ」を創り出す裏には別の顔もある。目に見えぬプレッシャーと、自らが目指す理想へ近づくための生みの苦しみ。関田は葛藤していた。
「勝っても素直に喜べないこともあるし、むしろ楽しいと思うことはほとんどないかもしれません。自分が思っているようなトス回しやプレーができた時は楽しいけれど、そうするためには自分がレベルアップしないといけないし、求めるレベルはどんどん高くなるので、そう簡単には届かない。ずっと走っているだけで、ゴールが見えないマラソンってすごく苦しいじゃないですか。今の状態は、たとえるならそういう感じなのかもしれないですね」