ボクシングPRESSBACK NUMBER
「1試合6万円~」知られざるプロボクサーの“収入事情”…トラブルで引退させられた元日本王者に起きた奇跡「“まさかの”世界戦、結果は?」
posted2023/07/03 17:02
text by
細田昌志Masashi Hosoda
photograph by
Getty Images
野球からの転向、大学中退、引退トラブル……波乱続きのボクシング人生とは?【全3回の3回目/#1、#2へ】
◆◆◆
プロボクサーの“収入事情”
今年の4月3日で38歳を迎えた前東洋太平洋スーパーライト級王者の近藤明広(一力)は筆者にこう言った。
「まさか、この年齢まで現役を続けるとは思いもしませんでした。だって、一度は引退届を出されているんですから」
なぜ、近藤明広は引退しなかったのか。
所属ジムである日東ジムとの意見の相違もあって、2013年12月26日付で引退届を出されたことで、彼は路頭に迷った。
所属ジムを放り出されるということは、収入源を断たれるということにほかならない。昨今「プロボクサーは専業でやっていくのはまず不可能」と言われる。確かにそれは事実だろう。ただし、ファイトマネーがあるからまとまった収入が得られるのも事実である。
デビュー間もない4回戦ボクサーは1試合につき6万円、6回戦ボクサーは8万円、日本ランカーに準ずる8回戦ボクサーは10万円、これにジムへのマネージメント料33%が引かれた金額が得られる。
これが日本ランカーとなると、1試合40万円(27万円)、日本王者や東洋王者、世界ランカーは100万円(66万円)となる(カッコ内は33%を引いた金額)。加えて、ファンや後援者から渡される激励賞や、チケットを売って収入を得られる場合も少なくない。
すべてのジムや選手がこうとは限らない。現金で支払われるか、チケットで支払われるかの差はあるし、選手の手に渡るはずの激励賞を横取りする悪徳ジムもなくはないのかもしれない。それでも、ボクサーが所属先のジムを離れてしまえば、無収入となることに変わりはないのである。
「まさかの展開でした」
所属する日東ジムを離れ、海外に活路を求めた近藤だったが、その話もまとまらなかった。現役の日本ランカーにして元日本王者の身柄が宙に浮いた。彼自身「さすがにもうダメかな」と諦めかけたのも無理はない。