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「負けは明らかでも両腕を突き上げ」ピカソの井上尚弥対策は「見事だった」元世界王者・飯田覚士が“びっくりした”7Rの攻防「相当自信があるんだなと…」
posted2025/12/31 17:01
井上尚弥とアラン・ピカソの一戦は予想に反して12回判定までもつれこんだ
text by

二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Naoki Fukuda
ピカソの井上尚弥対策は「見事だった」
ディフェンシブなチャレンジャーを倒せなかった、そのもどかしさが伝わってくるようだった。
12月27日、サウジアラビアの首都リヤドで開催されたボクシングイベント「ナイト・オブ・ザ・サムライ」。そのメーンで登場したスーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥は、WBC2位で33戦32勝17KO1分けの無敗キャリアを誇るメキシカン、アラン・ピカソと対戦し、1人がフルマークをつける文句なしの3-0判定勝利(120-108、119―109、117―111)を収めた。しかしながらモンスターの表情が晴れることはなかった。
WOWOW「エキサイトマッチ」の解説でお馴染みの元WBA世界スーパーフライ級王者・飯田覚士は世界戦歴代最多の27連勝となった今回の一戦をどのように見たか。
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ピカソが実行した尚弥対策は「見事だった」と飯田は語る。
勝つための対策というニュアンスではなく、「尚弥選手の強打をとにかく被弾しない」との文脈において。単にガードを固めて殻に閉じこもったのではなく、手を出さなかったわけでもない。消極的に見えても、弱気ではない。“被弾したら元も子もない”というその大前提から勝つ確率がいくら低かろうとも、設計した作戦を信じて忠実に遂行した。
「僕が予想していたのは、ピカソ選手が正面に立たないようにして尚弥選手の左ボディーと狙いすましたパンチを防いで、横に動きつつ隙あれば自分も得意とする左ボディーから左フックを返していく戦い方をしてくるんじゃないか、と。
でも試合が始まってみると、正面に立って対峙してきたのにはびっくりしました。なるほど、こうやってきたか、と。身長が8cmほど高いのに、尚弥選手と同じ目線になるまで頭を低くしてガードを固めることで、懐が随分と深くなる、つまり正面にあっても、ボディーの位置を遠くできる。頭の位置を頻繁に変え、的にならない意識も相当に強い。逆にこの構えだと、自分もパンチを打ちづらくもある。彼本来の攻撃力は下がるものの、長い時間を掛けながら一瞬の隙をうかがっていくんだなと思いました」
井上尚弥は「2Rで誘っていた」
1ラウンド、正面で構えるピカソに対し、王者はサイドにステップを踏みながらジャブで牽制していく。左ボディーも置くようにスッとストレートで叩き、コンビネーションを当ててポイントを取り切ってしまうのはさすがである。2ラウンドに入ると開始15秒で左を上下にヒットさせ、素早いコンビネーションを見舞って揺さぶりを掛けている。


