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阪神スカウトらが注目する「古謝樹」って何者? “就活の場”で最速153キロを叩き出す半端ない伸びしろ…急成長のウラに“あの名参謀”
text by
高木遊Yu Takagi
photograph byKYODO
posted2023/06/16 17:00
初戦で姿を消したが、ドラフト候補生たちにとって”就活の場”でもある大学選手権で好投した古謝樹。すでに全12球団のスカウトが視察に訪れている
今季の神奈川大学リーグでは5勝0敗と春の連覇に貢献しながらも、制球にバラつきが見られる日もあった。だが、大きな注目が集まる大学選手権のマウンドではそうした姿はほとんど見られず、担当スカウトたちからも高評価の声が多く聞かれた。
「バラつきが無く、まとまっていましたね。フォームの中でここを改善すればもっと良くなるんじゃないかという要素も見つかりましたし、今後さらに球は速くなると思います」(楽天・部坂俊之スカウト)
「良い投球、良い経験だったと思います。高校1年生の頃から見ていますが、1年ごとに成長している。体のこなしや腕の振りが良かったので筋力が上がれば面白いと思っていたのですが、順調に伸びてきていますね」(阪神・吉野誠スカウト)
松坂大輔らを育成してきた名参謀
今やドラフト候補にまで着実に成長を遂げてきた古謝だが、高校時代は無名の存在でもあった。
神奈川・湘南学院高時代の球速は出ても130キロ台後半、平均では130キロ台前半から中盤ほどの投手。ただ、阪神・吉野スカウトのコメントにもあるように、当時から秘めたポテンシャルには一目が置かれていた。その土台を作ったのは、ある人物のおかげだと古謝は言う。
「投手としての基礎は、小倉清一郎さんから教わりました。週1、2回、大会前になると3回ほど練習に来ていただいていたので、すごい投手がやっていたトレーニングに追いつきたい一心で取り組んでいました」
小倉氏といえば、かつて横浜高の部長として渡辺元智監督(当時)を支え、松坂大輔(元西武など)や成瀬善久(元ロッテなど/現BCリーグ・栃木)、涌井秀章(中日)ら球界を代表する投手を育成してきた名参謀だ。当時、湘南学院高の臨時コーチを務めており、古謝はその指導の恩恵を受けることになる。
小倉の教えは投球以外の部分にも、きっちりと表れていた。前述の仙台大戦ではメリハリの利いた一塁牽制球でアウトを奪い、バント処理も堅実。9回表に捕手が後逸した際は三塁走者を冷静に目で一度確認しながらホームにベースカバーに入って先制点を防いだ。古謝は「フィールディングも毎回のように小倉さんに叩き込まれていました」と笑って振り返る。