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デビュー9カ月で永田裕志の三冠王座に挑戦…安齊勇馬24歳は“全日本プロレスを背負う男”になれるのか?「顔面がどうなろうが、骨が折れようが…」
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2023/06/15 18:00
2022年9月にデビューした全日本プロレスの新鋭・安齊勇馬(24歳)。6月17日の大田区総合体育館で、永田裕志の持つ三冠ヘビー級王座に挑む
「顔面がどうなろうが、骨が折れようが…」
安齊は「まだ早い」という外の声を気にしている。しかし永田は意に介さない。
「そんなのは『うるせえ、バカ』と言っておけばいいんですよ。オレが挑戦して、全日本プロレスを守るんだという気持ちが大切ですよ。早いとか遅いとか関係ない。かつて新日本にも、1年ちょっとでベルトを取ったやつがいた。そして世界でスーパースターになった」
これは23歳、デビュー1年3カ月で2003年にIWGP王座戴冠を果たした中邑真輔のことだ。
「全日本は安齊が背負っていかなくてはいけない。そんな安齊だからこそ、今までにない面を引き出したいという気持ちがある」
安齊が永田に勝つことができれば、三冠王座戴冠の最年少記録とデビューからの最短記録の両方を更新できる。だが、安齊は言った。
「とにかくベルトを取り返す、勝ちたいという気持ちだけです。永田さんはデビュー戦の相手で、タッグのパートナーであり、所属でない選手では一番近い選手です。師匠じゃないですけれど、背中で学んできた選手です。でも今は敵です。恩返しの試合じゃないですよ。ひっくり返してやります」
一方の永田も、譲る気は毛頭ない。
「やったらドラマですよね。やらせませんけど。永田に土をつけたらね。見出しになる戴冠になるんじゃないですかね。名乗りを上げたということは彼自身にはいい経験になる。リング上で殴りまくり、蹴りまくり、ズタボロにして、どん底に落としてしまうかもしれない」
永田はそう言いながらも、安齊にプロレスラーとしての愛情を示しているように見えた。
「悔しさ、つらいこと、恥ずかしいこと。これは大きな財産になりますよ。このままスター街道をいくであろう安齊選手に対して言えるのは、恥はかいた方がいい。ファンはやられて、そこから立ち上がる姿に声援を送るんじゃないのかな。だから、とことん叩きのめす。それを世の中に伝える。それがオレの役目かなと思います」
永田裕志という壁を前にして、精悍な顔立ちの24歳は闘志をみなぎらせた。
「顔面がどうなろうが、骨が折れようが、勝つつもりです。永田さん用に、新しい技を用意しています」
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